有罪判決を逃れようと裁判所を支配下に置いた李在明  韓国の民主主義は「司法改革3法」で完全に壊れた

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「式目」が無い大陸と半島

――なぜ、韓国人は法律を尊重しないのでしょうか?

鈴置:儒教国家だからです。社会秩序を保つには、修養により立派な行いをする人間を作ればいい、という考え方をするのが儒教です。裏には「法律で細かく行動を規制するのは下策」との意識があるのです。

 この辺りの話は『韓国消滅』(第2章第4節「台湾の民主化は進んだのに……」)を参照下さい。韓国と同じ頃に権威主義体制を脱したのに、今では安定した民主主義を享受する台湾との比較にも言及しています。

――日本も儒教国家ではないのですか?

鈴置:韓国社会への儒教の浸透ぶりを知ったら、日本などとても儒教国家とは言えません。『韓国民主政治の自壊』(第2章第4節「法治なければ民主なし」)で詳述しましたが、日本は鎌倉時代に武装農民たる武士が自らの手で法律――式目を作ったことも大きい。

 外交評論家の岡崎久彦氏は日本人の遵法精神は「自分たちで作った法律」との意識から生まれたと指摘しています。それに比べ、朝鮮半島や中国大陸では、法律は上から下されるものでした。

――結局、左派と保守が激しく戦うほどに韓国の三権分立は壊れていく。

鈴置:ええ、韓国の民主政治の仕組みは崩壊過程に入ったと思います。日本や西欧では、民主政治は法治の基礎の上に成立しています。政治勢力の間に対立はあっても中立の司法が存在し、それが定めたルールの中での抗争にとどめる。

 一方、韓国ではルール無しの、それどころか司法を凶器に使う泥仕合が始まりました。暗闘が深まるほどにルールを壊していく。悪循環です。

判決はカネで買える

――それにしても「裁判所がおかしくなる」と、危機感が高まらないものでしょうか?

鈴置:危機感は生まれないと思います。韓国人は「裁判の判決はカネで買える」と信じている。もともと裁判所に対する信頼が無いので「司法への介入」にいまさら目くじらを立てる人はいないのです。

――民主主義が壊れていくと、韓国はどうなるのでしょうか。

鈴置:さらに不安定な国になります。すでに、国家の危機でもないのに非常戒厳令が宣布される国になってしまった。それに今、韓国は米国との同盟を堅持するのか、破棄して自主防衛に走るのか、外交的な岐路に立っています。

 この選択はまさに左右の鋭敏な対立を呼びます。外交の不安定化が内政の混乱に拍車をかけるのは間違いないと思います。尹錫悦政権の非常戒厳令も、北朝鮮や中国につながる勢力の摘発が名分でした。

「おかしくなった」のは韓国だけではありません。習近平政権は台湾併合を虎視眈々と狙っています。その中国も人民解放軍の最高幹部がほとんど粛清されるなど、異常事態が発生しています。北朝鮮は核武装に邁進しています。

 東北アジアの明日は予測が付きません。日本人もよほど気を引き締めて国の舵取りをしないと、国家百年の計を誤ります。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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