「豊臣兄弟!」で話題、27歳が早くも夏ドラマでダブル主演 「体を使える女優」本当の実力

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直が登場した理由

 直は架空の人物。史実には出てこない。小一郎の実際の正室は武将の娘・慶(吉岡里帆)。3月29日放送の第12回から登場する。

 脚本を書いている八津弘幸氏と制作陣はどうして直を登場させたのか。おそらく後に豊臣秀吉(池松壮亮)になる藤吉郎を主人公とせず、小一郎の物語にしたことと深く関係する。

 兄弟でありながら藤吉郎は成長するとともに猜疑心の強い非情な人物になっていく。小一郎のことまで信用しなくなる。一方で小一郎は温厚な人柄のまま大人になり、ほかの武将たちから信頼される。それが史料による2人の人物像だ。

 この物語でもそうなるはず。小一郎は名もなき少女のために死んだ直と暮らした日々をずっと胸に刻み、初心を忘れないのだろう。

 ドラマとしての「豊臣兄弟!」の人気は高いまま。個人視聴率は6~7%前後(世帯11~12%前後)。仲野ら出演陣の好演もあるが、脚本が面白い。

 これまでの豊臣家の物語とは一味違い、竹中半兵衛(菅田将暉)、蜂須賀正勝(高橋努)ら兄弟の仲間になる人物のクセが強い。なにより、仲間にするプロセスが愉快に描かれている。

 まるでRPGのようだ。兄弟が相手に仲間になってもらうまでの交渉はやや手こずるが、仲間になってくれた途端、兄弟や織田信長(小栗旬)勢が強くなる。

 同じ八津氏が脚本を書いたTBS「半沢直樹」(2013、20年)も主人公が味方を増やし、敵を次々と倒していった。ゲーム感覚の要素があるところが現代人と肌が合うのではないか。

 川並衆の頭領・蜂須賀正勝は過去の豊臣家の物語でも個性的に描かれてきた。山賊みたいな正勝もいた。藤吉郎が一時、彼に仕えていた説もあるため、父親のような存在に描かれたこともある。

 だが今回は野性味と男気に溢れ、それでいて純粋。魅力的だ。第7回、藤吉郎が協力を求めたが、見向きもしない。また、かつては正勝と義兄弟のような間柄だったものの、今は織田勢に加わった前野長康(渋谷謙人)が交渉役になると、激高する。それを見た藤吉郎が正勝へのゴマスリで前野を川に叩き落とすと、目を丸くして驚く。素直なのだ。

 菅田が主演級以外で大河の仕事を引き受けたのは意外だった。今回の竹中半兵衛が興味深い人物だからだろう。仲間になるよう誘いに来た小一郎たちが死んでもおかしくない弓の仕掛けを家に設置したり、異様なまでに人物観察眼が鋭かったり。超頭脳派で武士にはまるで見えない。過去に存在しなかったタイプの半兵衛だ。

 スピード感があり退屈させないところも現代人に好まれるのではないか。第1回の時代設定は永禄2(1559)年で、問題児・藤吉郎が故郷の中村に帰ってくるところが描かれたが、次回第11回は早くも同12(1569)年である。

 信長が守ると宣言した室町幕府15代将軍・足利義昭(尾上右近)が殺されかけてしまう「本圀寺の変」が起こる。信長の怒りが大爆発するのは間違いない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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