「豊臣兄弟!」で話題、27歳が早くも夏ドラマでダブル主演 「体を使える女優」本当の実力
原作は話題のミステリー
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」で、仲野太賀(33)が演じる主人公・小一郎と相思相愛の仲だった直を好演した白石聖(27)の大河明け第1作が決まった。7月から始まる日本テレビの夏ドラマ。山田涼介(32)とダブル主演する。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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「豊臣兄弟!」によって一躍人気が高まった白石。山田とダブル主演すると聞くと、ラブストーリーを連想してしまいがちだが、実際には本格ミステリー。作品名は「一次元の挿し木」である。
作家の松下龍之介氏による同名原作小説は昨年の「第23回このミステリーがすごい!」で文庫グランプリを受賞した。ミステリーマニアの間では傑作との呼び声高い。
原作はヒマラヤで200年前の人骨が見つかるところから始まる。この骨を大学で遺伝子学を研究する七瀬悠がDNA型鑑定したところ、4年前から失踪している自分の妹・紫陽のDNA型と完全に一致した。その後も謎めいた事件が相次ぐ。誰かの陰謀か。紫陽は生きているのか。
山田は悠、白石は紫陽にそれぞれ扮する。放送枠は日曜午後10時半。これまでに「真犯人フラグ」(2021年)や「ホットスポット」(2025年)を放送してきた。考察物の作品が目立つ放送枠である。
白石のデビューは2016年。直を演じたばかりなので、ミステリーとはイメージが結び付かないと思われる人がいるかも知れない。しかし、実際にはフジテレビのミステリードラマ「合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~」(2023年)で探偵助手役を経験済み。
同作品はコメディ色が濃かったものの、初主演作の同局「恐怖新聞」(2020年)はホラー色満載のミステリアスな作品だった。白石は1人暮らしの大学生役。なぜか夜中に頼みもしない「恐怖新聞」が配達される。そこに掲載されている陰惨な出来事が次々と現実になる。昭和のヒット漫画の映像化だった。
体を使える女優
約10年の女優生活で白石の演じてきた役柄は意外なくらい幅広い。コアな白石ファンが増える端緒となったNHK「だから私は推しました」(2019年)では地下アイドル・栗本ハナを演じた。準主演だった。さまざまな悩みを抱える主人公のOL・遠藤愛(桜井ユキ)に推されているという設定だった。この作品は高く評価されて、放送文化基金賞の優秀ドラマ賞を獲った。
賞より白石にとって大きかったのが体を使える女優であることが広く知らしめられたこと。物語後半のステージ上でのパフォーマンスは本物のアイドルに引けを取らない出来映えだった。
演技者の中には体を使うことがあまり得意ではない人もいる。運動神経の問題だから仕方がない。白石は体が使えるから、演技で躍動感が容易に出せる。
たとえば「豊臣兄弟!」第8回の前半。のちに豊臣秀長となる小一郎と直は祝言を目前に控えていた。小一郎は自分を嫌っている直の父親・坂井喜左衛門(大倉孝二)の名前を口にして、こう言う。
「いずれはそばに呼んで一緒に暮らせんかの」。これに直は表情を輝かせ、「いいの?」とつぶやく。「当たり前じゃ」という言葉が返ってくると、座っていたのに跳ね上がり、小一郎に飛びつく。その後は抱きしめたというより、羽交いじめだった。もちろん顔でも喜びを表した。体の使える女優でないと難しい演技だった。
直が喜左衛門と暮らせることが、どんなにうれしいかが伝わってきた。だが、直は喜左衛門に結婚の許しを得るため、故郷・中村に行った帰り、地元民同士の抗争に巻き込まれて殺されてしまう。見ず知らずの少女を庇ってのことだった。同じ第8回の後半だ。
前半での白石の喜びの表現が出色だったため、後半の悲劇性が高まった。勢い良く小一郎に飛びついてきた直が、ピクリともしない遺体になってしまったから、小一郎のセリフが悲哀に満ちた。「あー腹減った。直、握り飯つくってくれ」。小一郎の心痛が伝わってきた。
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