セミナーで「家庭をもって守りに入っていた」と気づいた…年下女性に「ギラギラしてる」とおだてられ カンチガイ53歳夫の大後悔
時すでに遅し
ある日、母から連絡があった。先輩が病気のことを知らせたらしい。文剛さんは、つい気が緩んで泣き言を言った。
「『泣きたかったのは彩花ちゃんのほうだよ。あんたみたいな冷たい男、私の息子じゃないから』と母にきっぱり言われました。黙って電話を切るしかなかった。当然ですよね。もう僕からは連絡はできない。自分が悪いのだからと思ったけど、こんなときだから少しは心配してくれてもいいのにとも感じた。それが僕の弱さなんでしょう」
欲に身を任せたような霧子さんとの生活は楽しかった。だが、文剛さんは結局、彼女のいる世界になじめなかった。住む世界が違っていた。
古いアパートにひとりで引っ越した。霧子さんの父親が慰謝料として200万円ほどくれた。手切れ金だと文剛さんは解釈した。突き返したかったが、アパートを借りる費用にするしかなかった。
「霧子の飼っていた猫と一緒に越しました。この猫だけが僕の身内ですね。その後、彩花が一度だけ連絡をくれました。『一度は愛した人だから助けになりたい気もするけど、あなたがどれほど子どもたちを傷つけたかを考えると、どうしても体が動かないのよ』と。それはそうだろうと思いました。僕はもういないものと思ってほしいと伝えました」
一度くらいは罵倒してほしい
病を抱えながら仕事にも復帰したが、半年前、再発が確認された。治療する意味もないと考えたが、仕事のパートナーから『命ある限り精いっぱい生きてほしい』と言われ、前を向く決意をしたという。
「彩花にも子どもたちにも、許してほしいとは言えない。でも生きていたら、いつか会えるかもしれない。一度くらいは罵倒してほしい。と同時に、僕の後悔も知ってほしい。いや、知ってほしいというのは僭越ですね。でも僕が本当に愛していたのは彩花と子どもたちだということだけは伝えたい」
気持ちは日によって深く沈んだり前向きになったりの繰り返しだ。それでも先輩と、もう一度がんばろうと決めた仕事があるから、彼はなんとか毎日生きることができると言った。
「後悔している気持ちを、言葉や態度に表すなんて本当にむずかしい。表現した時点で、後悔してないと思われるだけでしょうし。どうしたらいいかわからないけど、今はとりあえず生き延びることを考えるしかないんです」
夜な夜な、彼は猫にかたりかける。「どうしようもない人間だよ、オレは」と。猫は彼の腕の中にすっぽりと入って顔をこすりつけてくる。彼の今の原動力は、その温かさだという。
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文剛さんの後悔の根底には、自ら終わらせた彩花さんとの家庭が幸せだったという事実がある。【記事前編】では、彼が当時抱いていた“不満”を紹介している。
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