セミナーで「家庭をもって守りに入っていた」と気づいた…年下女性に「ギラギラしてる」とおだてられ カンチガイ53歳夫の大後悔
幸せな家庭で「守りに入っていた」
最終日。周りの人たちを誘って6人ほどで居酒屋へ行った。立場も環境も世代も違うのに、話をしていて楽しかった。文剛さんより年上の女性がいたのだが、「私にもまだまだ未来はある」と明るい笑顔で話していた。
「オレはいつしか守りに入っていたなあと思いました。そもそも人生、攻めるタイプではないけど、それでも家庭があって幸せだなとぼんやり生きていた。共働きだし、明日の米に困るような状況でもないし、子どもたちはかわいいし、妻はできた人だし。すべて受け取ることが僕の役目のようになっていました。自分の人生なんてあまり考えたこともなかった。家族が楽しくいられればそれでいい。でもみんなの話を聞いていたら、もう少し自分がどう生きるかを考えたいなと思い始めたんです」
まだ40代に入ったばかり。自分に何ができるだろう。そう思っていると、職場を辞めて独立準備を始めた先輩から声がかかった。「一緒にやらないか」と。今までの仕事の経験も生かせるし、大変だけどやりがいもありそうだった。
「最初からきみを誘いたかったんだけど、迷惑かなと思って躊躇していた。でも準備を始めてみると手応えがある。今ならまだスタート地点に立ったところだから、完全に対等な立場でやっていける。先輩にそう言われて、急に震えるほど興奮しました。何かやってやろう、いつまでも組織の駒ではいたくない。そんな気持ちになった。それを一回り年下の霧子に相談したんです。彼女は『無責任にどうこう言えないけど、チャレンジする意味はあると思う』と。彼女は20代にしてすでに起業していましたから、私でよければいつでも協力するとも言ってくれた。みんなどんどん自由になればいいとも。そうは言ってもと怯むと、『すべて自分の責任になる生き方も、案外気持ちがいいわよ』って。かっこいいですよね」
「ぎらぎらして魅力的」
霧子さんに煽られた面もあるのかもしれない。文剛さんは先輩に合流するべく、会社をあっさりと辞めた。彩花さんには相談しなかった。
「彩花なら応援してくれる、わかってくれると思っていました。そして思ったとおり、彩花は『わかった。生活はどうにかなるから、あなたは精一杯がんばって』と言ってくれた。事態を知った母が、文句を言いたそうでしたが『お義母さんが息子を信じなくてどうするの』と彩花に言われて渋々納得していました」
2年間は赤字だった。文剛さんと先輩は、以前勤めていた会社から下請けの仕事をもらったり、知人から細かい仕事を請け負ったりもした。地道にがんばっていけば、いつかこちらの企画も通るようになると信じた。
「3年目から風向きが変わってきました。似たような他社が倒産したこともあったし、僕らの仕事ぶりが認められたのかもしれない。徐々に仕事が増えていきました」
収入が増えると、周りの見る目も違ってくる。それでも文剛さんは派手な生活はしなかった。その代わり人脈が広がるよう営業をし、事業を広げていく基礎固めをしようと必死だった。スタッフも5人抱えた。
「霧子に言われたんです。『あなたの目が変わった。ぎらぎらして男として魅力的』と。当然、そういう言葉には弱いので、ついに霧子と男女の関係になりました。すると彼女は『私、不倫の関係は嫌』って。勢いで、わかった、離婚すると言ってしまった。彼女は自分の人脈を紹介してくれました。いくら地味にしようとしても、華やかな世界に駆り出されてしまう。そんな感じでしたね」
未来を自分で作る。そう決めてから人生の速度が上がったと文剛さんは言う。全力で駆け抜けている感じが好きだった。生き急いでいると言われたこともあるが、生き急いでばったり倒れるならそれもいいと覚悟を決めた。
自分の人生、これでいいのか。心のどこかでそんなモヤモヤを抱えた中年期の危機感。それを仕事のみならず女性に向けてしまう男性は少なくないと実感する。恋愛は、そんな危機感を吹っ飛ばしてくれ、さらに男としての自信を取り戻すことができる。本人にその意識があるかどうかは別として、結果的にそれが不倫関係へと発展して家庭での信頼や愛情を失う。それがわかっていながら突っ込んでいくのが、まさに「中年の危機」なのかもしれない。
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