“異形のスカウト集団”メンバーには「早慶MARCH」の大学生も…“自前のアプリ”と“凄惨な暴力”で支配する最凶トクリュウ「ナチュラル」の実態

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「トラブルを起こさないようにしましょう」

 プレイヤーにとって高額の報酬が「アメ」だとすれば、「ムチ」は内部統制だ。組織の厳格なマニュアルはアプリからも閲覧できる。“新人”のトップ画面には次のような注意が表示されるのだという。

〈会社の方針として『謙虚』があります。トラブルを起こさないようにしましょう。店舗の方への連絡はしっかり返す事。案件の送りっぱなしは店舗に嫌われます。損してしまうので、自分の為にしっかり返信しましょう〉

〈社内礼儀〉として“ビジネスマナー”も説かれている。〈挨拶編〉〈食事編〉〈連絡編〉など各シーンによって、目上の人間に対する接し方や、仕事中の態度などが事細かに定められている。Suicaの使用を認めない、など禁止事項も多く、規定に違反すると主には“減給”と称した罰金が科される。しかし、中にはこんな規則も存在する。

「筋トレをすることで一部の罰金がチャラになるという、ちょっと滑稽な規則もあるんですよ。一説には、会長が筋トレ好きで、組織内に筋トレ文化が広がったといわれています。スカウト集団というのは基本的に男性のみの世界であり、また性質上、女性を紹介した店の利用も御法度ですから、筋トレのほか、皆で食事したり、サウナに行くなど人間関係も濃密です」

 清水氏は現役メンバーにも接触し、取材を行っているが、彼らはおしなべて「むちゃくちゃ礼儀正しい」のだという。

「恐怖」と「金」

「不良集団という印象はなく、ビジネスマナーは完璧です。実際に会ったメンバーはコミュニケーション能力も高く、昼間の仕事でも十分にやっていけるタイプばかりでした。タバコを吸う前には“失礼します”って必ず言いますし、電話の受け答えもすごく丁寧。彼らは組織を“会社”と呼んでいて、“ナチュラル”という言葉を使わないんです。対外的にも対内的にも、本当に“会社”という意識なのかもしれません。少子化の影響もあって家庭や社会のなかでゆるく育てられてきた若者たちは、組織に入る際に、徹底的に指導され、しつけられていったのでしょう。今のご時世、一般企業で同じことをやればパワハラと言われるレベルですが、収入で釣りつつ、内部統制で締め付けることによってプレイヤーは抜けられなくなっている」

 罰金と並ぶ「ムチ」が、恐怖心だ。ルールに背いたプレイヤーは時に暴力を振るわれる。その様子は撮影され、内部統制に“利用”される。

「喧嘩すらしたことがないようなプレイヤーが、凄惨な動画を見せられ、あるいは、実際に暴力行為を目の当たりにする。ナチュラルという組織は、恐怖心と金の両方で縛り付ける独特の管理方法になっています。ルールを守らないプレイヤーを“通報”することも奨励されていますね」

 かといって、「闇バイト」を介した広域強盗のように、末端のメンバーだけが手足のように使われるわけではないことも、ナチュラルの特徴であると清水氏は言う。

「幹部だけでなく、“会長”もリモート会議に頻繁に出席して意見しているのだそうです。本来、上位者になると収益の取り分も増えますから、悠々自適に過ごしているのだろうと思っていましたが、ナチュラルに関しては全然違いました。幹部でも組織を守るためにどんどん口出しをする。隙がない上に、常に成長を求めている。だからこそ警察も実態を把握できないし、ここまで規模が拡大していったのではないでしょうか。そういう意味では従来の反社とも異なります。時代の感覚にきわめて敏感で、短期間で多く稼ぎたいという若者を取り込み、急成長したのがナチュラルです」

 そのナチュラルに関しては今年に入っていくつかの動きが見られる。組織に捜査情報を漏洩していた警察官の刑事裁判が始まり、“会長”とされる男が逮捕された。内部に影響は生じているのか。

 警察の厳しい捜査にも“徹底抗戦”の態度を崩さないという「ナチュラル」。その最新事情について、後編【「ナチュラル」会長逮捕でも「メンバーには給料が支払われ、組織は平常運転」…マル暴刑事まで懐柔する「凶悪スカウト集団」を重罪に問えない事情とは】で報じている。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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