「麒麟・川島」が「内村光良」を抜いたワケ 「理想の上司」初の1位 「包容力」に加わった要素とは

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判断力と瞬発力

 朝の生放送では、時間を読んで進行をする力だけではなく、場を盛り上げるための状況判断力と瞬発力、個々の出演者を生かすプロデュース力、スポンサーへの配慮など総合的な能力が求められる。川島はその難しい現場において、決して偉ぶらず、焦らず、しかし弛緩もさせずに番組を成立させてきた。その姿が、そのまま理想の管理職の姿として受け取られた。

 ここで重要なのは、川島が単に「頼れる有能な人」だから選ばれたのではなく、「優しくて有能な人」だから選ばれたという点である。一昔前のテレビのMCには、共演者に良い意味で緊張感を与えるような強いカリスマ性や決断力が求められていた。だが、今の若い世代には、そのような強権的なリーダー像は支持されにくくなっている。

 むしろ、誰かを不必要に傷つけず、場を壊さず、複数の立場を整理して前に進めることの方が高度なスキルだと認識されている。川島の番組進行は、笑いの感覚に裏打ちされた柔らかさを持ちながら、かなり計算高く構造的でもある。

 誰にどこまで振るか、どのタイミングで拾うか、危うい流れをどこで止めるかなどを瞬時に判断している。その空気を読む力が、会社におけるチーム運営の実務能力としても評価されているということなのだろう。

 テレビ番組のMCというのは、共演者、視聴者、制作者、スポンサーなど、番組にかかわるそれぞれの人から容赦ない要求が突きつけられる立場に置かれる。それは会社における中間管理職のようなものだ。

 上からの要求に媚びへつらい、部下に偉そうにするだけでは組織は回らない。多方面から自分に求められていることを理解した上で、上からのノルマをクリアして、部下のモチベーションを維持して、業務を回していく。テレビのMCに求められる資質は、組織の現場で中間管理職に求められるものと似通っているのだ。

 内村光良が長年支持されてきたのも、共演者を優しく見守る包容力があったからだ。川島はそこにもう一段、現場処理の速さと知性の要素が加わっている。

 川島が「理想の上司アンケート」で1位に選ばれたのは、単にタレントとして人気があったからではない。優しくて有能な上司を切実に求める時代の空気の中で、彼のような人物が理想像として浮上したのである。場の雰囲気を明るく保ちながら、締めるところは締める。

 今の時代における理想の上司とは、強く引っ張っていく人ではなく、安心感と実務能力の両方を備えた人なのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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