安全保障研究の第一人者「佐瀬昌盛さん」 貫いた現実主義と公平【追悼】
右にも左にも偏重せず
2000年、防大を退官。論争をいとわず、筋を通す。安倍晋三首相の私的諮問機関の委員として集団的自衛権の行使容認を主張する一方、そもそも集団的自衛権とは何かという理解がないまま議論を進めるのは間違っていると異議を唱えた。
防衛庁長官を務めた坂田道太さんの生涯を著書『むしろ素人の方がよい』(新潮選書)で描き安全保障問題は公明正大な議論と情報公開で国民の理解を促すことが不可欠と強調した。
共著もある現代史家の秦郁彦さんは言う。
「佐瀬さんは右にも左にも偏重しない。実証的な歴史観をお持ちだった。戦争に関しても臆測や無理な解釈で語りませんでした。発言がぶれず信頼できました」
普段通りの日に
08年、東京音楽大学で教授を務めた愛妻、道子さんに先立たれている。次女の中嶋春菜さんは言う。
「一つのテーマをとことん探究しなさいと言われて育ちました。父のことが心配で私たち夫婦は同居したのですが、何事も自分でやり遂げようとする。食事もできる範囲で作り、(14年に)週刊新潮の食卓日記で高い得点(96点)を頂き、栄養士の先生が認めてくれたと喜んで自慢していました。物を捨てられない人で、書斎は本や新聞の切り抜き、書類であふれていた。自費出版でも構わないと回顧録のような文章も書き始めていましたが、関心は新たな出来事にあったと感じています」
2月24日、91歳で逝去。
「この日も普段通りでした。新聞を読み、原稿を書いておりました」(春菜さん)
その原稿はトランプ大統領の政治姿勢を冷静に批判する内容だった。最後まで視点が曇ることはなかった。
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