子宮体がんを発症も…手にした保険金で東南アジアを飛び回る女性ライター(40)が魅力的すぎた件…つらい経験を乗り越えて“あくまで楽観的に生きる”ことの意義
長い人生、いろんなことが起こるもの。あまりに辛い出来事に絶望することもあるが、そこで強がりを見せながらも、あくまで楽観的に生きている人は魅力的である。最近、そんな風に人生を歩む人とタイ・バンコクで4日間を一緒に過ごした。フリーライター女性のHさん(40歳)である。【取材・文=中川淳一郎】
【写真】バンコクの高級料理店で振舞われた料理とそこでライターさんが振り回した電撃殺虫器
とにかく神出鬼没
彼女は子宮体がんを発症し、子宮を摘出した。もう子どもを産めない体になり、日々思うことをクリエイター向けプラットフォーム「note」で書いている。元々私の妻の友人で、ギャル風のルックスと破天荒過ぎる言動から「面白い人物だなァ……」と感じていたのだが、今回、改めて彼女のことを知ることになり、「この生き方は素晴らしいのでは」と考えたのだった。
そこで、今回は彼女について書いてみたいと思う。本人は自身のことを「病気持ち」「子ども産めない」「仕事ねぇ!」「カネがねぇ~!」「暇だー!」と評しているが、同じような境遇にいる読者も、彼女の人生を知ることで、少しは安心できるかもしれない。
私の妻とHさんは20年来の知り合いである。妻もフリーライターなのだが、その頃Hさんが働いていた人材会社の仕事で出会った。二人は同世代ということもあって気が合い、Hさんがフリーライターになった後も時々会っていた。なぜかHさんのことを知っている人は皆「H嬢」と呼ぶ。
私も彼女とはこれまで何度か飲んだことはあるのだが、「素っ頓狂なフリーライターがいるもんだな」くらいに思っていた。ギャル雑誌のライターをやっていて、名だたるモデルの結婚式に招かれるほど好かれる人物なのだが、とにかく神出鬼没である。彼女が子宮の手術を控えた数日前、私の妻に連絡がありこう言われた。
「もうすぐ手術だから、青木さんに会いたいんですけど、一人じゃ恥ずかしいんで一緒に来てもらえませんか。中川さんも一緒にどうですか?」
青木さんとは、格闘家の青木真也選手である。H嬢は青木さんのファンで、カレーに関する取材で青木さんと面識ができたという。私自身は青木さんとはこの10年ほど対談やイベントをしたり、同氏のコラムの編集をさせてもらったりしてきた。
命の危険性もある手術を前に、「やれることはやったれ!」とばかりに青木さんのトレーニング施設に足を運び、朝から我々は会話に華を咲かせたのである。そして手術は無事成功。長期間の入院になったが、いつも「カネがねぇ~」と言っていたH嬢はいかに乗り切ったのかと聞いたらあっけらかんとこう言った。
暇だから
「意外に思うでしょうけど、私、がん保険に入っていたんですよ! それなりの保険金が下りました」
そして療養生活を経て、今回のバンコク旅行に至った。いや、バンコクだけでなく、彼女は東南アジア諸国を旅し、各地で知り合いやネットで知り合った人物と会い続ける生活を送っていたそうだ。貯金もかなり減った状態だったが、海外を訪れた理由はただ一つ。「暇だから」だという。日本では実家に住んでいて、家賃がかからないため、「快適過ぎる~!」とのことである。
そんな彼女だが、日々安いメシと安宿を求めて東南アジアでその日暮らしを続ける中で、我々と合流。彼女を含め、私の知り合い7人がバンコクに集った。
その中には富裕層の食通も含まれていて、その人が高級レストランを予約していた。H嬢は店構えを見るなり、「うわっ、高そう!」と狼狽。それまで彼女は50バーツ(250円)のメシばかり食っており、それで満足していたのだが、この店はどう考えても一人1万円はする。
「ヤバイ、私のご飯の40回分を一回で使っちゃうの!」と言ったので、私は「オレとHさんの金銭感覚は同じです。オレも同感ですが、ここは食通の方に合わせましょう」と言った。それが慰めにならないのは分かっていたが、「カネがねぇ!」と言うH嬢の考えに共感していることだけは伝えたかった。
この日、何を食べても「うまい! コレ、イイ!」とH嬢は言い続けたのだが、途中、突然、個室の中でテニスのラケットのようなものを振り回し始めた。このラケットは、蚊を殺す道具で、鉄線に電気が通り、蚊を焼き殺すのである。「バチッ」と音がして火花が飛ぶ。H嬢の腕は確かで、着実に蚊を仕留めていく。
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