河合優実、永野芽郁、広瀬すず…多感な世代の微妙な揺らぎを描く「卒業式映画」5選【早春の映画案内】

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卒業したらどうするのか

〇「高崎グラフィティ。」(2018年)

 第一回未完成映画予告編大賞のグランプリ受賞作をベースに制作された。このまま卒業してもいいのか、自分はどう生きたいのか。不安と希望を抱えた5人の2日間を追う。

 物語は高校の卒業式が終わった直後から始まる。校舎の廊下で、卒業証書を持って写真を撮ったり、卒業アルバムにメッセージ書き込んだりするクラスメイトたち。最後のホームルームで進路を聞かれた優斗(萩原利久)は、「たぶん家の修理工場を継ぐと思います」と浮かない顔で話す。幼馴染の美紀(佐藤玲)は東京のファッション専門学校に行き、寛子(岡野真也)は結婚することを報告する。

 その後の卒業パーティーがリアルだ。これまで友達だと思っていたクラスメイトの裏切りや中傷など、卒業ってそんなに素晴らしいことですか、と問いかけているように見える。やがて、美紀の父親が彼女の入学金を持って失踪。5人はその行方を探し始めるが、優斗は先輩から車の保険金詐欺の仕事に誘われて……。

 萩原利久は、昨年公開の「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」で主演を務め、注目を集めた。本作でも不安定な自分を持て余しながら、未来の希望を手繰り寄せようとする青年を好演している。

 地元の閉塞感や家族に嫌気が差して飛び出したかったり、未来を見通せない卒業生たちを等身大に描いている作品だ。

卒業式を見てもらいたい人

〇「そして、バトンは渡された」(2021年)

 2019年の本屋大賞を受賞した、瀬尾まい子の小説が原作。卒業式シーンが、物語のある事実を解き明かす場になっている。

 森宮優子(永野芽郁)は4回も苗字が変わった。これまで、血の繋がらない親に次々と育てられてきたからだ。現在は、料理上手な義父・森宮(田中圭)と暮らしている。優子は高校の卒業式で、合唱曲「旅立ちの日に」のピアノ伴奏をすることになり猛特訓を始める。

 一方、梨花(石原さとみ)は夫を何度も変えて自由奔放に生きている。最初の夫の娘・みぃたんを可愛がっていたが、ある日突然姿を消してしまう。やがて2つの物語が結ばれ……。

 中盤のクライマックスが卒業式シーンだ。「旅立ちの日に」を演奏する優子に、これまでの日々を思い出し森宮は涙する。ピアノ初心者だった永野は、数カ月にわたり練習したという。実は、この卒業式シーンはラストにもう一度登場する。その時初めて物語が円環し、心に残る閉じ方をするのだ。

 梨花役の石原がとても良い。奔放だが魅力的な女性を弾けるように演じている。周りからは自由気ままに生きているように見えるが、その理由はラストで明かされる。

 石原は初めての母親役だったが、2022年に第1子、2025年に第2子を出産し実生活でも母親になった。この作品で、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞し、さらに「ミッシング」(2024年)で、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。本格派俳優へと成長した。

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