志田未来、松嶋菜々子、戸田恵梨香…冬ドラマを制した女優たちの「演技力」と「ハマリ役」
制作陣の英断
視聴率がドラマの中で常に3位以内に入る大ヒット作になったのがテレビ朝日「おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-」(木曜午後9時)。成功の立役者は主演の松嶋菜々子(52)に違いない。松嶋の主演連ドラは約9年半ぶり。やはり制作陣の英断だった。
松嶋の役柄は米田正子。東京国税局内にある「複雑国税事案処理室(ザッコク)」のリ
ーダーだ。4人の個性派メンバーを率い、次々と脱税を摘発する。怖い物知らずの女性である。
デビュー34年のベテランだけあって、松嶋は正子の役作りから抜かりなかった。まず初回の登場時からパンツのポケットに両手を入れていた。正子の強さが表された。
その後も外出時はポケットが両手の定位置。第2回で元国会議員秘書の父親・田次(寺尾聰)と久しぶりに会ったときには屋内にもかかわらず両手はやっぱりポケットの中だった。
猫背になることは決してない。背筋は常にピンと張っている。もともと姿勢の良い人だが、背を丸めると弱々しく見えてしまう。
うるさい上司や脱税者に責め立てられても顔色ひとつ変えない。それどころか、相手を見据えながら眼鏡の位置をずらし、威嚇する。地の顔つきが穏やかだから、強さを出すために眼鏡を活用したのだろう。
一方で大地真央(70)が扮する飯島作久子らメンバーがミスなどを詫びると、優しく微笑み、ときには手も握る。決して声を荒らげない。松嶋は強くて温かいリーダーを体現することに成功した。大地をメンバーに配役したのはうまかった。18歳年下の松嶋の現役感が増す。
松嶋は自分の持つ型の1つをうまく使った。フジテレビ「救命病棟24時シリーズ」(1999~2013年)における小島楓である。使命感と正義感の強い医師、医局長だった。曲がったことを嫌い、仲間を大切にするリーダーだった。正子と通じる。
自分の型を生かすことは少しも恥ではない。故・太地喜和子さん、故・大原麗子さん、吉永小百合(80)、天海祐希(58)、ら主演級の女優には自分の型を大事にする人が多い。
三浦友和(74)にインタビューをさせてもらった際、「1つの型でお客さんに喜んでもらえたら、役者として最高ですよ」と教えられた。どんな役柄でも演じられる俳優だけが名優という考え方は誤りなのだ。
視聴率ナンバーワンのTBS「日曜劇場 リブート」(日曜午後9時)でヒロインである謎の女・幸後一香を演じているのは戸田恵梨香(37)。3月1日に第6回の放送を終了しながら、いまだ善人か悪党かが分からない。
同回で一香は全事件の黒幕であることを主人公・早瀬陸(鈴木亮平)に告白したが、当初は陰鬱な表情を見せ、やや間を置いたあと、挑発的な笑顔を浮かべた。やむなくウソを吐く前の顔にも見えた。
物語が終盤に入ろうとしているのに善か悪かをはっきりさせない。演技力が高い上、善人役も悪党役も経験済みの戸田ならではのハマリ役である。
戸田はNHK連続テレビ小説「スカーレット」(2019年度後期)ではヒロイン・喜美子の15歳から50代までを1人でこなすという離れ業を演じた。今回は一香が早瀬の死んだ妻・夏海(山口紗弥加)のリブート(成りすまし)であっても不思議ではない。含みのある演技をしているからである。
[2/3ページ]

