米中の戦闘機が黄海上で対峙 「台湾侵攻なら北京空爆」と習近平を威嚇したトランプ 李在明は米国に八つ当たり

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米日は「現状変更は認めぬ」と合唱

――なぜ、米軍は「異例の黄海進入」を実行したのでしょうか?

鈴置:「台湾に侵攻するな」との中国に対する警告です。小泉防衛相は先に引用したXで以下のように唱えました。

・安全保障環境が一層厳しさと複雑さを増している中、力による一方的な現状変更を起こさせないという、日米の強い意志を示すことが重要です。

 このセリフは2025年12月5日にホワイトハウスが発表した「国家安全保障戦略(2025年版)」、いわゆる「NSS(National Security Strategy)」と平仄が合っています。台湾海峡の一方的な現状変更は認めないと宣言したくだりです。

・We will also maintain our longstanding declaratory policy on Taiwan, meaning that the United States does not support any unilateral change to the status quo in the Taiwan Strait.

 CNNは2025年7月8日、トランプ大統領が習近平主席に対し「台湾に侵攻したら北京を空爆すると通告した」と2024年に支持者の前で演説したと報じています。「Trump said he threatened to bomb Moscow if Putin attacked Ukraine, 2024 fundraiser tapes show」です。

 見出しは「モスクワ空爆とプーチン脅す」ですが、本文では「習近平に対しても北京空爆と脅した」とのくだりがあります。

・Trump later claimed he relayed a similar warning to Chinese President Xi Jinping over a potential invasion of Taiwan, telling him that the US would bomb Beijing in response.

「支持者の前で演説した」のは真実でしょう。テープが残っていますから。しかし、「習近平を脅した」ことが本当かは分かりません。証拠が無いのです。トランプ大統領が支持者の前でホラを吹いている可能性も大いにある。

 ただ、ウソだとしても北京は笑って見過ごせません。トランプ大統領の「北京空爆」の意思を、米国メディアが喧伝したのに変わりはないのですから。

北京空爆は韓国から発進

 さらに同年11月16日、在韓米軍司令官のブランソン(Xavier T. Brunson)陸軍大将が、戦略上、韓国が貴重な位置にあることを強調した論文を発表しました。
 
『韓国基地から中国を攻撃』で“台湾有事は日本の問題”ととぼけてきた韓国人は真っ青に 在韓米軍司令官の宣言が突き付けた踏み絵」で詳述しましたが、北京と近い在韓米軍基地は、攻撃拠点としては最適であると指摘したのです。

 この論文で使われたのが朝鮮半島を中心にした「東が上」の東アジア地図です。確かにこの地図を見ると、在韓米軍基地は米国の仮想敵である中国・ロシア・北朝鮮の鼻先に突き付けた槍の穂先であることが良く分かります。

 ブランソン論文はトランプ大統領の「北京空爆論」が決して妄想ではなく、現実に可能な作戦と論証したのです。そして2月18日に在韓米軍基地を発進して中国に向かった戦闘機と、グアムからの爆撃機。

 米軍とすれば、習近平主席を脅しあげる決定打のつもりでしょう。10日後の2月28日に米国はイスラエルとともにイランを空爆し、最高指導者のハメネイ師らを殺害しています。

 台湾への武器売却の面でも、トランプ政権は2025年12月、史上最高額となる111億ドル(約1兆7000億円)の取引を承認しました。

 法律面でも2025年12月の政府高官の接触拡大に道を開く台湾保証実施法が成立。2026年2月には台湾が中国から脅された際に、中国代表をG20やBIS(国際決済銀行)から排除する台湾保護法が下院を通過しました。

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