冬季五輪のレジェンド「猪谷千春」が提言していた「夏のインドア競技を冬に移行」は実現するか? 乗り越えるべきは「プロリーグの壁」

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世界のスポーツ勢力図を変えるきっかけになるほどの影響が

 多くの日本人がこの議論を最初に意識したきっかけは、東京2020のマラソン会場が急きょ東京から札幌に変更された時だった。そもそも、基本的には冬のスポーツであるマラソンを、開催時期が7-8月にほぼ固定された夏季大会で実施するのは危険だとの意見が高まっていた。それが世界的な異常気象と災害的な猛暑によって切迫化した。同様に競歩なども切実に冬への移行を検討すべき有力候補だろう。これらは競技実施の必然性があっての移行だ。しかし現在検討されているのは、それとは別の経営的な側面が大きい。

 バレーボールやバドミントン、柔道など、五輪開催時期と他の国際大会の時期調整が可能と思われる競技は抵抗が少ないかもしれない。だがバスケットボールのようにアメリカのプロバスケットが競技の頂点にあり、NBAシーズンの佳境と重なればスーパースターたちの参加は難しくなる。その点も決定に影響するだろうから、調整は容易ではない。

 ある時期から、「オリンピックはプロも含めた最高峰の選手たちの舞台」と方向を決めたオリンピックが、“ドリームチーム”に固執せず、ゴルフやテニス、バスケットボールなど、高額の報酬を得ているプロ選手が参加しないことを容認した方向性を求める可能性もないとはいえない。

 インドアの枠をはめなければ、本来は秋から冬が主要なシーズンであるサッカーも、真夏よりずっと競技しやすいともいえる。しかしサッカーもまた、各国のプロリーグと時期が重なり、U23限定といえども、出場選手のレベルが下がる可能性もある。

 一部競技の冬季大会への移行は、オリンピックそのものの存在を変え、世界のスポーツ勢力図を変えるきっかけになるほどの影響力を秘めている。

スポーツライター・小林信也

デイリー新潮編集部

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