タワマン乱立で「埼玉都民」急増…川口駅はもう限界 上野東京ラインの“京浜東北線化”に新市長の決断は

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川口駅停車の副作用

 川口市の本音としては、池袋駅・新宿駅・渋谷駅へ直通する湘南新宿ラインも、上野駅・東京駅へと直通する上野東京ラインどちらも停車させたいと考えていたはずだが、いきなり両方を求めるのは欲張りだとの批判も出かねない。過剰なリクエストをしたら、JR東日本もいい顔をしないだろう。

 短期間で交渉をまとめるには、どちらか一本に絞った方がいい。そう判断した川口市は、運転本数が多い上野東京ラインを選択。これまでの方針を変更して、“上野東京ラインの停車”を求めるようになった。

 川口駅を利用する大半は川口市民だろう。川口市が市民のために川口駅の利便性向上に取り組むのは当然の話だが、その一方で上野東京ラインの川口駅停車は副作用も起こしかねない。

 川口駅に上野東京ラインが停車すれば、川口駅から乗車する乗客によって混雑率は上がってしまう。それにより、今度は上野東京ラインで輸送障害が頻発する恐れもある。

 輸送障害は東京駅で相互乗り入れしている東海道本線にも波及する。そうした懸念から、JR東日本は川口市の要望を拒み続けてきた。

 また、停車駅が増えることで上野東京ラインの速達性が失われる。これは上野東京ラインが京浜東北線化することを意味している。既存の上野東京ライン利用者にとって所要時間が増えることや混雑率が上がることは容認できない。上野東京ラインの停車は川口市民にしかメリットがなく、それゆえに他市民から反対が出るのは当然だった。

 それでも川口市は粘り強く交渉を続け、2025年に川口市がホームの増設工事や駅自由通路の費用全額を負担することを条件にしてJR東日本から合意を取り付けた。

新市長は見直しに言及…

 これらの事業費は約430億円と試算されたが、駅の混雑対策や利便性向上という効果があり、さらにニューファミリー層を呼び寄せる効果も期待できる。つまり、川口駅に上野東京ラインを停車させることで税収増も期待できた。

 川口市の立場で見ると、上野東京ラインを停車させることは都市発展や人口増のための投資ということになる。

 川口市の奥ノ木市長は、上野東京ラインの川口駅停車に道筋をつけて、後任市長に道を譲った。そして後任を決める市長選が2026年2月に実施された。ところが新たに就任した岡村ゆり子市長は就任早々から川口駅の上野東京ライン停車を見直しに言及した。その背景には、現在の工事費の高騰があった。

 建設業界は2024年前後から人手不足感が急速に強まり、その対策として作業員を確保するべく賃上げを繰り返してきた。それでも人手不足を解消するには至らず、今後もさらなる賃上げは避けられない。

 そうした人件費の高騰にくわえて、資材費も右肩上がりを続けている。これらを勘案すると、川口駅の上野東京ラインを停車させるための事業費は大きく上振れすることは確実だろう。そうしたことを踏まえて、岡村市長は事業の見直しに言及したと思われる。

 川口市が費用の全額を負担するという前提が崩れるなら、JR東日本が上野東京ラインの川口駅停車を白紙に戻すことは必至だろう。そもそもJR東日本にとって上野東京ラインを川口駅に停車させるメリットはほとんどないと言っていい。

 上野東京ラインの川口駅停車問題が揺らぎ始め、長年にわたる議論は振り出しに戻ろうとしている。

小川裕夫/フリーランスライター

デイリー新潮編集部

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