侍ジャパンのメンバーが次々離脱…日本球界が抱える構造的な“問題点”

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データ重視の考え方にも危険が潜んでいる

 投手は、肘の内側側副靱帯再建手術、いわゆる“トミー・ジョン手術”を受ける例が増えている。これは、体が大きくなって球速が上がったことで、肘の靱帯への負担が大きくなった影響も大きいという。今年の春季キャンプ中には、大卒2年目の安徳駿(ソフトバンク)、大卒3年目の滝田一希(広島)がトミー・ジョン手術を受けて長期離脱となった。

 日本球界では、様々なデータをもとにパフォーマンス向上に取り組むことが常識となっており、選手個人がボールの回転数を測定する機器などを購入するケースが見られる。

 このようなデータ重視の考え方にも危険が潜んでいるという。前出の球界OBが説明する。

「数字やデータを重視することは、悪いことではありません。どの球団も以前では考えられないほどのデータをとっています。ただ、投手ならばストレートの球速、打者ならば打球速度といった『指標の最大値』を追い求め過ぎている部分があると思います。野球は投げるスピードや飛距離を競うものではありません。1球だけ165キロが投げられたり、低い確率で遠くへ飛ばしたりしても、試合では使えませんよね。そういった最大値ばかり上げようとすれば、体に大きな負担がかかります。大事なのは長いシーズンでコンスタントに結果を出すこと。そのためには、体に負担をかけずに力を発揮できる必要があります。それが“技術”なのだと思います」

球団側にも責任が

 ここまでは選手のオフの過ごし方、トレーニングなどの要因を指摘したが、球団側にも責任はあるという。選手を獲得する立場であるスカウトは、こう話す。

「スカウトは、選手の特長や課題を球団に事前に伝えますけど、入団後は現場に口を出すことができません。残念ながら、キャンプを視察に行くと、アマチュア時代の良さが全くなくなってしまう選手や、怪我を繰り返すような選手がいます。コーチが教えすぎてしまうこともありますし、育成方針は首脳陣が入れ替わるとリセットされることも珍しくない。選手に対しては『監督やコーチの話はある程度聞きながら、上手く受け流すことが大事だよ』という話をしています」

 WBCという大舞台で活躍を期待されたメンバーが不在となる現実は、日本野球が抱える構造の一端を映しているのかもしれない。球速や打球速度といった“最大値”は確かに進化した。しかし、その進化が長いシーズンを戦い抜く再現性や耐久性とどのように両立しているのか。フィジカル強化とデータ重視が当たり前となった時代だからこそ、強さの定義そのものが静かに問い直されている。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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