“生成AIが任天堂を脅かす”説に識者は「さすがに話を盛りすぎ」…まだまだ「AIは任天堂の敵ではない」と断言する4つの理由

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AIに“創造”は不可能

 どんなにAIが優秀であっても、「人工知能は絶対に閃かない」──これが最も重要なポイントだと井上氏は指摘する。

「私は配信サイトで芥川賞と直木賞の発表と記者会見を中継する番組の司会を担当しています。最近は編集者や書評家の皆さんと『AIが書いた小説』について議論する機会も増えてきました。AIに小説を書かせると、ネット上に公開されている作品や、著作権が切れた過去の名作を“学習”し、一定のレベルに達したものを脱稿するそうです。ただし文学新人賞でいえば2次予選を通過するかどうかというところで、最終選考に残るほどではない。その理由はAIの学習能力や計算能力、推測能力など論理的な部分は人間をはるかに凌駕していても、今のところ『無から有を生み出す』という創造行為は無理だからです。AIがクリエーターに成長するには、まだまだ時間が必要ということでしょう」(同・井上氏)

 AIは過去に書かれてきた小説を学び、その延長線上にある作品を手堅くまとめることはできる。だが「閃き」というクリエイティビティは欠如しているため、どこかつまらない。読者を驚かせるような個性的な作品は絶対に書けない──。

 井上氏は「ポケットモンスター」を例に挙げる。ポケモンがない時代にポケモンのコンセプトを発案することができるのは人間だけだ。

 完全にオリジナルな世界観やキャラクターをゼロからAIが作り出すことはできない。もしAIに「『ゼルダの伝説』っぽいゲームを作って」と頼めば簡単に完成するだろうが、真にオリジナルのゲームは生み出せない。

「AIが得意なのは完成したポケモンを使って、どんなビジネス展開をするか、といったコンサル的な場面でしょう。クリエイティビティの観点から考えると、AIが作ったゲームが任天堂のゲームを凌駕することはあり得ない。これが第2の理由です」と井上氏は言う。

任天堂もAIを活用する可能性

「任天堂の強さは他にもあります。インディーズ出身の人気バンドを思い浮かべてください。ファンの数が増えるほど、最後は大手のレコード会社と契約を結ぶはずです。大企業は販売力と宣伝力を持っていますし、著作権が侵害された時など、ミュージシャンを守るノウハウも蓄積しています。同じことはゲーム業界にも言えます。10年に1人の天才がAIを使ってゲームを作り、全世界のユーザーを驚かせたとしましょう。その天才が任天堂と組んで仕事をする可能性は非常に高いと思います。実際、ファミコンの時代から、外部の優れたゲームクリエイターが話題作を提供してきました。第3の理由として任天堂が外部の天才と仕事を共にしてきた歴史を挙げます」(同・井上氏)

 そもそも任天堂とAIを対立的に考えるほうが間違っているかもしれない。井上氏は「任天堂ほどの企業が最新のAI技術を参考にしないとは考えにくいです」と言う。

「任天堂ほどの資金力と技術力があれば、自社でAIを開発しても不思議ではないでしょう。将来的には任天堂もAIを活用して素晴らしいゲームを量産すると考えたほうがよほど自然です。今、この瞬間にもAIの専門家と任天堂の社員が技術的な交流を深めていたとしても私は驚きません。任天堂がAIを活用する可能性のほうが高いというのが第4の理由です」

 井上氏は任天堂の株安を考えるにあたり、まずは半導体メモリーの不足のほうが不安材料としては大きいと指摘した。

 第1回【「Switch2」爆売れも「任天堂株」は半年で「40%超」大暴落のナゾ…“生成AIの進化でゲームメーカーは終焉を迎える”は本当か】では、昨年8月に過去最高の株価を記録した任天堂に“半導体ショック”が直撃し、あっという間に株価が下落していった経緯などについて詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

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