「炎が体の上を吹き抜けた」「頭髪は全て焼けた」…82年「ホテルニュージャパン火災」に突入、救助隊員が遭遇した壮絶な現場
炎が体の上を吹き抜けた
隊員が腹這いになって、手をつかみ、2人を引き上げた。もう1人はロープをおろし、男性の体に巻き付けて救助する。
「3人に部屋に人が残っているかと聞いても、抱き合って泣き叫ぶだけ。私たちは次の救助に向かい、8人救出した。ところが3人はもう1人残っていると言い出したのです。確認すると、部屋には人影がある。しかし、室内は、高熱の煙が発火して、大爆発を起こすフラッシュオーバー寸前の状態でした」
隊員が突入したものの、救助に至らず、隊長自ら部屋の中に飛び込んでいく。
「救出者の体にロープをしっかり巻き、外に出そうとした時、いきなり炎がゴーと燃え上がった。フラッシュオーバーです。体をかがめたので、炎は体の上を吹き抜けた感じでした。時間がないと思い、救出者を引きずった時、再びフラッシュオーバーが起き、私の体全体に火が襲いかかりました。何とか救出者を連れて、屋上まで辿り着きましたが、ヘルメットに炎が入り込み、頭髪は全て焼けてしまいました。火傷を負った私は近くの病院に搬送されました。治療後、また現場に向かおうとしましたが、医師に“死ぬ気か”と言われ、そのまま入院することになりました」
シーツにつかまり下の階へ
9階、10階の火の回りが早く、宿泊者の多くはベランダに逃れたものの、熱さに耐えきれず、何人もが落下して地面に叩きつけられて亡くなった。
9階の934号室には香川県から出張中のAさん(当時43)がいた。異変に気付いた時、すでに窓から炎が見える状態だった。
「電気スタンドで窓ガラスを割りました。窓の左側を見ると、寝間着姿の客が窓枠にしがみついて助けを求めていた。私は室内に戻り、靴を履き、ワイシャツを着て、窓際に戻りましたが、さっきの客の姿はありませんでした」
Aさんの部屋に炎が迫っていた。Aさんは、窓枠をつかみ、火元とは逆の右隣の部屋に飛び込んだ。部屋の窓にはシーツがぶら下がっている。Aさんはそのシーツにつかまりながら、下の方に降りた。
「8階の部屋の窓ガラスを蹴破ろうとしたが、なかなか割れない。しかし、よく見ると、1カ所だけ小さく割れたところがある。その穴を靴で踏みしめ、大きく広げ、部屋に転がり込みました」
客室に飛び込んだAさんは、ドアを開け、廊下に出て、そこから一気に階段をかけ下った。右手は血だらけ。喉は気道熱傷で口も利けない状態だったが、命は助かった。
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