4度目の五輪挑戦「高梨沙羅」はメダルを掴めるか? “重圧”と“注目”から解き放たれた「女王」への期待

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テトリスのように荷物を積み込む高梨

 常にメディアの注目の中にいるせいもあるが、高梨といえば寡黙であまり笑顔を見せない内向的なイメージがある。しかし、日本代表チームで過ごす時は「とっても明るい、頼りになるお姉さんですよ」と横川は教えてくれた。

「海外遠征ではだいたいワゴン車2台で行動します。1台に荷物を積み、もう1台に選手とコーチが乗ります。荷物がかなり多くて、積み込むのが大変なのですが、これを一手に引き受けてくれるのが高梨です。まるでテトリスのように、荷物を綺麗に積み込んでくれる。その集中力は抜群です(笑)」

 知られざる意外な一面。さらに、長くチームメイトとして行動を共にしてきた伊藤有希(土屋ホーム)の存在も大きいという。

「伊藤有希は、飛型審判の中ではとても評価が高い選手です。伊藤のジャンプは“飛型の見本”と言われていて、点数を引くところがない。飛距離の高梨、飛型の伊藤、日本には世界に誇る二人のスペシャリストがいるのです。しかも伊藤は、『時には自分のことだけ考えて競技に臨んでもいいんじゃないか』と言いたいくらい、チームメイトに気遣いをする素晴らしい子なのです。初めて日本代表に参加する若い選手はみんな伊藤のサポートを受けて国際舞台に馴染んできました」

 国内大会とは勝手の違うスーツチェックなどにも戸惑うことなく対応できるのは、伊藤が甲斐甲斐しく面倒を見てくれるからだという。つまり、こうした面からも、今回は高梨が競技に集中できる環境が整っているといえるだろう。

高梨の笑顔が見れたら

 そうは言っても、気象条件やシャンツェのコンディションに大きく影響されるのがジャンプ競技の難しさ。過去にも、実力者が失速し、伏兵が距離を伸ばすといった番狂わせがしばしば起こっている。

「以前のジャンプ台のアプローチはたいてい、曲線から直線になり、また曲線になって飛び出す構造でした。それが最近は、ずっと曲線が続くアプローチに変わっている。ミラノ・コルティナ大会のジャンプ台もそうです。それと、踏み切りでどちらの方向に飛び出す傾向があるかを示す《滑空比》という設計の目安があるのですが、古い台は縦に落ちる感覚が大きかった。最近の台は落ちるより横に飛び出す感覚が強くなっています」

 横に飛ぶから距離が出やすい。その分、アプローチが下に設定される可能性もある。

「距離が出る台は、身体が軽くて空中勝負が得意な丸山、高梨に有利です」(横川)

 今大会の舞台となるプレダッツォ・スキージャンプスタジアムは1989年に開場した歴史ある会場だが、オリンピックのために6台のジャンプ台のうち2台を解体して新設した。つまり、最新の傾向が反映されたジャンプ台なのだ。

 実は昨年9月のプレ大会で、日本の女子選手(ノルディック複合)が着地で転倒し、右膝前十字靭帯を損傷する重傷を負うなど、転倒事故が相次いだ。風向きが追い風になる場合が多く、着地の時、急に落ち込むような感覚があるとも指摘された。そのプレ大会で3位になった男子の小林陵侑も、「すごく面白い台で、色々な難しさはある。最後、たたき落とされる感じになるので飛型でも順位が変わってくる」と感想を述べている(2025年9月19日、朝日新聞)。

 抜群の飛距離で世界を圧倒し続け、現役女子ジャンパーの中では誰よりも高いレベルの経験を重ねてきた高梨にとって、難しいプレダッツォのジャンプ台はむしろ有利な条件とも言えるのではないだろうか。

 まずは日本時間の8日(日)深夜から未明にかけて行われる女子個人ノーマルヒル。同11日(水)深夜から未明の混合団体、同16日(月)深夜から未明の女子個人ラージヒル。リアルタイムに見るのは大変な時間帯だが、いまから心が躍る。

 金メダル争いの中心はもちろん丸山希とニカ・ブレヴツ(スロベニア)だが、怖いもの知らずに見えた十代の奔放さで高梨が飛べたら、高梨とオリンピックの心の距離は近くなるだろう。高梨の溌溂としたジャンプ、着地後の笑顔が見られたらうれしい。

スポーツライター・小林信也

デイリー新潮編集部

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