日テレは「下請け」に転落か WBC放映権をNetflixに奪われ…野球中継70年の伝統が揺らぐ日

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プロ野球とテレビが蜜月関係

 日本テレビは、日本で最初にプロ野球のナイター中継を行った民放である。プロ野球とテレビが蜜月関係にあり、両者がすさまじい人気を誇っていた黄金時代を象徴する存在だった。かつてはゴールデンタイムに野球中継が当たり前のように放送されていて、テレビをつければスター選手の活躍がリアルタイムで共有されていた。その構造の中心にいたのが日本テレビだったのだ。そのような過去を知っている世代の人は、今回のWBC制作受託に対して、単に「時代が変わった」だけにはとどまらない喪失感を覚えているのではないか。

 このような形の制作受託が常態化すれば、テレビ局は次第に「自社でコンテンツを所有し、編成し、放送する存在」から、「外部プラットフォームの要請に応じて映像を作る存在」へと変質していく。制作の技術はあっても、企画やIPの源流を握れない状態が続けば、コンテンツメーカーとしての競争力は落ちていく。その場その場で合理的な判断を積み重ねた結果、引き返せない地点までたどり着いてしまう可能性もある。

 日テレのWBC制作受託によって、ただちに「地上波テレビはもう終わりだ」などと言えるわけではない。ただ、日本のテレビ局が「電波を持っているから安心」という時代が終わったことを示す象徴的な出来事であるのは間違いない。

 コンテンツが飽和してメディアが乱立するこの時代に、テレビ局はどのように生き残っていけばいいのか。ここが時代の大きな分かれ目となるかもしれない。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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