「給食無償化」で日本人の美徳がアダに…「栄養教諭」は限られた予算に頭を抱え、「調理員」が厳しい待遇に耐え続ける“給食室の現実”
第1回【「給食無償化」に賛成の人は「1食あたり260円」で充分と考える? 食材が高騰する中、専門家があえて“給食費値上げ”を説く理由】からの続き──。昨年の12月、自民、維新、そして旧公明の3党は給食無償化の制度設計で合意した。(全3回の第2回)
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支援額の上限は1人あたり1カ月5200円。国と都道府県が折半して捻出することにはなっているが、自治体の負担分は地方交付税で相殺される。つまり実質的には国が5200円を負担することになるわけだ。
だが1カ月に20回給食が出るとして、5200円を20回で割ると260円という金額になる。果たして1人当たり1食260円の予算でどんな給食が作れるのだろうか。日本経済は2021年からインフレに転じ、誰もが食材の高騰を実感している。
教育現場における食育と給食の問題に詳しい武庫川女子大学教育学部の藤本勇二教授は「政治家の皆さんはもちろん、できれば保護者の方々も給食を調理している現場を見学してほしいです」と訴える。
「栄養教諭の皆さんは今でも厳しい予算に苦しめられながら、子供たちの健康と安全に配慮し、必死にメニューを作成しています。食材が旬を迎えればメニューに取り入れ、地域の伝統料理や海外の珍しい料理も紹介しています。また無償化に伴って支給される5200円は食材費に使われるので別の話になりますが、調理の現場は給食室の老朽化が深刻な問題になっています。給食調理員の職場環境や待遇も厳しい状況です」
給食は紛れもない教育
藤本教授は「相当な困難が立ちはだかっても、プロジェクトを実現させる優れた能力」は日本人の美徳だと考えているという。
「ところが、こと給食に限ると、日本人の美徳が仇になっていると考えざるを得ません。栄養教諭も給食調理員も信じられない献身で『低コストだが栄養バランスの取れた安全で安心な給食』を提供しています。しかし、もう見直すべき時期なのは間違いありません。子供たちに質の高い給食を食べてもらおうと思えば、それ相応のコストが必要だということを、私たちは認識する必要があるのです」
ローソンストア100は「だけ弁当 ウィンナー」を税抜276円で販売して大ヒット商品となった。こうした低価格弁当を給食として配れば合理的なのだろうか?
「給食の問題を考える際、重要な論点があります。『子供たちは外食できないから学校で食べる』のか『子供たちにとって給食は重要な教育だ』──のどちらなのか、という問いです。もちろん私は後者だと考えています。『同じ釜の飯を食う』という諺があります。クラスの全員が同じメニューを一緒に食べるだけで多くの教育効果が期待できるのです。望ましい食習慣の形成に寄与しますし、子供たちが食事中のルールやマナーを学びます。給食は立派な教育なのです」(同・藤本教授)
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