「この10年で、構成作家が半数近く入れ替わり」…元スタッフが語る「ナイトスクープ問題」の深層 「番組への愛情ある局員も現場を去っていった」

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数えきれないほどの話題作

「ナイトスクープ」は1988年に始まった長寿番組。関東キー局では見られないが、その知名度は高い。「道頓堀に沈んだカーネル・サンダースを救え!」や「全国アホ・バカ分布図」、「爆発卵」、「レイテ島からのハガキ」、「10年以上口をきいていない父と母」など数えきれない話題作を生み出し、時に社会問題も世に提起してきた。初代局長は上岡龍太郎、二代目が西田敏行、三代目が松本人志と超大物ばかり。その関西を代表するバラエティに何が起こっているのか。長年制作スタッフとして関わっていた元番組関係者が口を開いた。

毎週500~600通の依頼ネタが

 そもそも、番組はどのように作られているのか。

「スタッフは、ベテランも若手も常に新しい見せ方、おもしろい演出を考え、日々制作者としてギリギリのところで戦っています。立ち上げメンバーの一人でもある60歳超のディレクターも、いまなお現役でVTRを作り続けている。毎週3本放送するVTRネタは、すべて番組宛に届く依頼文の中から選びます。1週間に送られてくる約500~600通の依頼すべてに目を通しますが、採用に至るレベルにあるのは5~6通程度。ロケ当日の朝までネタが決まらないこともしばしばです。そういう時は“通天閣の上から愛を叫ぶ”といった街頭インタビューなどで埋め合わせをしています」

「週に1回、全制作スタッフが揃う全体会議が開かれますが、そこで1つ1つのVTRの内容まで詳しく話し合われることは少ない。ほとんどは各VTRの担当ディレクターと構成作家が集まる“ネタ会”(分科会)で仕上げられます。これはネタが決まるまで毎日開かれる。過去にオンエアしたものと類似の依頼ははねられ、“有名人と会いたい”とか“サプライズを手伝ってほしい”などの依頼も不採用。依頼者がどこにも頼めず困っている、他の番組では到底扱えないというようなものしか残りません。ようやく採用できるネタと出会うと、時間と予算に乏しいなかで依頼を解決しながらも、いかにテレビ番組としておもしろく、新しい見せ方でVTRを仕上げていくかをギリギリまで詰めていく。これは38年間、変わらないルーティンです」

感覚の麻痺

 ハードでタイトな作業である。

「常に“ネタ不足”に追われるなかで、少し依頼内容がおもしろくない、つまり“弱いネタ”でも採用することがある。依頼者への事前取材を進めるなかで依頼の“芯”をより明確にし、デフォルメすることもあります。ただし、これは依頼者自身が納得し、依頼の事実背景が変わらないことが大前提です」

 今回、ABCが公表したような依頼文の“改稿”も、

「あくまで放送上伝わりやすいように“整える”ことや、依頼者に新しく“書き直してもらう”ことはあります。ただ、今回は依頼の原文が《家族8人みんなで家事や育児を協力しあって頑張っているが、他の兄弟よりも僕が一番頑張っている。他の家族の子供と比べてどうなのか調査して欲しい》という趣旨だったとか。それが実際に放送された内容では、家事や育児を長男ひとりが背負っているように描かれていました。元の趣旨の『他の家族との比較』を調査するものではなくなってしまっています。書き換えられ、放送された依頼文も《長男やるの疲れました。ぼくの代わりに長男やってくれませんか?》と、元のものからはかけ離れたものになっている印象を受けました。それでも依頼者が納得し、おもしろいと乗っかってくれることも多いですが、今回の家族は深刻な社会問題となっている『ヤングケアラー』と紙一重の家庭環境。制作陣もその点への認識があったはずです。しかし、下がり続ける視聴率を少しでも取り戻したい、おもしろいものを世に出したいというプレッシャーと、長年繰り返してきた依頼文の『デフォルメ習慣』で、そうした感覚が麻痺していたことは否めないと思います」

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