円安と金利上昇で「日本」は兵糧攻め状態 秀吉の「干殺し」「飢え殺し」に学ぶべき教訓

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消費税を下げてもそれ以上に物価は上がる

 そもそも現在はインフレ局面なのに、積極財政で需要を刺激すれば、インフレ圧力がいっそう高まり、さらなる物価高につながってしまう。

 しかも、やっかいなのは長期金利の上昇である。高市氏が自民党総裁に選ばれる前は1.6%程度だったのが、2.38%にまで急上昇した。長期金利が1%上がれば、国債の利払い費が数兆円規模で上振れするといわれる。長期金利上昇の原因が積極財政への懸念である以上、高市総理がこの路線を推し進めるかぎり、日本の財政は悪化を続ける危険性がある。

 そして、悪化した日本の財政が金融市場から突き放されれば、円は売られ続け、日本国債の信用はさらに下がる。それはとめどない物価高を意味する。しかもその間、借金は膨らみ続けるが、それは未来の選択肢が失われていくことにほかならない。

 それなのに与党どころか野党までが、減税や給付金、社会保険料の減免ばかりを主張しているから心配になる。たとえば、食品の消費税率をゼロにすることで、私たちの生活がどの程度楽になるのか。

 現在、8%の消費税が課せられている食品が、単純にマイナス8%で購入できるようになると、4人家族で年間6万~8万円程度の支出減になるという。だが、各商店は事務負担やシステム対応などで生じたコストを、価格転嫁する場合も多いと考えられる。したがって食料品価格が単純に8%下がるとは考えられない。

 しかも、与野党が消費減税に言及した途端に円が急落した。食品の消費税を廃止すれば年5兆円の税収減になるが、金融市場はそれが日本の財政悪化につながると懸念している、ということだ。だから、消費減税が実現されれば円安はさらに加速し、税負担が軽減された分など、あっという間に物価高で相殺されてしまいかねない。加えて、そもそも高市氏が自民党総裁に選ばれてから進んだ円安は、すでに数%の消費増税と同じ負の効果を私たちにもたらしている、ということも考える必要がある。

 高市政権は防衛予算を増やし、城は堅固に改修しようとしている。ところが、兵糧攻めに対してはまったくの無策といっていい。しかも、野党もその無策を追及するどころか、同じ轍を踏もうとしている。だが、包囲された城内にいくら金銭を配ったところで、なにも買えず、城兵は飢えるだけである。三木城や鳥取城の例は大げさに聞こえるかもしれない。しかし、その譬えが外れているとはいい切れない状況に日本が進んでいることはまちがいない。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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