タイヤの重量は一般車両の5倍…“日本の物流”を支える「トラック整備士」が苦労するのは「体力の消耗」でも「専門知識」でもなく“ドライバーによる改造”

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車内に残された荷物に苦労する整備士

 もう1つ、これら「トラックドライバーによる改造」以外で、トラックの整備士から多く声があがった苦労は、「荷物問題」だ。トラックのなかには、修理の際、荷台に荷物を積んだまま出されることがあるという。

「車検に出してもらう際は空荷にしてもらうのが大前提なんですけど、ドライバーさんや職人さんは荷物多いですからね……勝手に触ったと、よく逆ギレされます」

「荷台の商品はドライバーさんのものではなく、荷主さんのものなので、触れることもできない。冷凍食品だと完全にお手上げです」

 荷物がそのままになっているのは、荷台だけではない。キャビン(車内)にも大量の荷物が残されたまま出されることがよくあるという。

「中身を出してから車検に出してとお願いしても、そのまま残されるので仕方なくこちらで一旦撤収するんですが、今度は戻し方が気に食わないとクレームになったりします。なかには成人雑誌や漫画、DVDがそのまま積まれた状態で出されることもあるんですが、点検前に取り出し、終わったらまた戻す。巻数の順番そのままに戻さないと怒られるんです」

 先述した通り、トラックドライバーのなかには、そのトラックを自分専用にして走っているクルマが少なくない。他人が乗らないため、ドライバーが毎度様々な私物を置くようになるのだが、車中泊しながら全国を走るドライバーになると、冷蔵庫や電子レンジなど、大型の家電を積んでいる人もいる。

 こうした荷物を車内に残したまま点検作業をすると、クルマそのものを破損させる原因になるという。

 というのも、キャビンを前に倒して行われるトラック整備では、必然的にフロントガラスが地面を向くことに。つまり、大きな荷物が横倒しになってフロントガラスをぶち破ってしまうことになるのだ。

「なので中に荷物が残っていた場合、これらも1つ1つ全部僕たちが取り出すことになる。万が一荷物が残っていた場合のことを考えて、キャビンを倒す際はフロントガラス部分に風呂マットを敷いています」

 また、整備士が感じるドライバーの特徴として「クルマが汚い人ほどなぜか注文が多い」という声がある一方、「トラックの整備においては、綺麗にされてる人より汚い人の方が整備する側も気にせず、整備がしやすい」とする人も。

 ブルーカラーの現場は、それぞれに事情や苦労を抱えている。少しの配慮が他人の現場を楽にする要素になる。トラックドライバーたちは、是非車検や点検に出す際、自身の荷物を残さず、クルマを預けてほしい。

橋本愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

デイリー新潮編集部

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