タイヤの重量は一般車両の5倍…“日本の物流”を支える「トラック整備士」が苦労するのは「体力の消耗」でも「専門知識」でもなく“ドライバーによる改造”
昨年11月に紹介した「整備士の労働現場」(2025年11月24日配信)。人手不足に季節や気候による苦労、電気自動車の増加による整備中の感電、「猫バンバン」の重要性などを紹介した。後編の本稿では、整備士のなかでも「トラックを整備する現場の人たち」から聞いた話を綴っていきたい。
より高い専門知識を要するトラックの整備
トラックは、乗用車と同じ「自動車」ではあるが、重量のある貨物を長距離走行で輸送することが前提になっているため、その構造や役割が大きく異なる。
タイヤ1つとっても、乗用車が1本約10キロなのに対して、大型トラックは約50キロ。1台で本数も6~12本使われている。各部品も大きく頑丈に設計されており、空気圧制御式ブレーキやエアサスなども、独自の機構を持つ。
トラックにディーゼルエンジンが多いのは、軽油のほうがガソリンよりもカロリーが高く燃焼効率も高まるため、トルク(タイヤなどを回転させる力)が大きくなり、長時間・高荷重の貨物輸送に耐えられるからだ。
こうしたトラックによる故障や事故は、乗用車以上に社会的影響も大きくなることから、乗用車より回数が多く、きめ細やかな点検が要求される。そのため、トラック整備は体力はもちろん、高度な知識と現場経験、さらには安全管理意識が強く求められるのだ。
キラキラ好きなトラックドライバーたち
そんななか今回、トラックを整備する整備士12名に話を聞いたが、苦労する点で多く挙がったのは、「大きな部品を相手にするので体力を消耗する」ことでも「専門的な知識を要する」でもなく、ドライバーによってなされる「カスタマイズ」や「改造」についてだった。
運送業界のトラックドライバーにはクルマ好きが多い。現在は荷主からの苦情や安全基準、重量などの観点から少なくなったが、いまだに「デコトラ」をこよなく愛するドライバーは多く存在する。
特に1度運行に出ると数日戻らないような長距離ドライバーの場合は、複数のドライバーが1台のトラックを乗り回しするのではなく、実質、自分専用のトラックとして同じ車両を毎日乗り続けることが多いため、昔ほど派手にはできないが、それぞれ自分好みの内装・外装にすべくカスタムを楽しむ人が少なくない。
しかし、国が定めた安全基準を満たしていないと「不正改造」となり、車検が通らない。トラックの整備士たちは、そうしたトラックドライバーたちの改造に一喜一憂することがあるのだ。
「自分が改造したトラックが車検を通るか聞いてくる人、さらには電飾を取り付けたまま車検に出してくる人も少なくありません」
「車検に適合しないホーンの取り付けは困ります。外して、配線も元に戻して車検を受けてほしいです」
「車幅灯やアンドン、どこから電源を取ってるか分からないような架装は困る。ヒューズが飛ぶ(切れる)と原因を探すのが大変なんです」
「ドライバーさんがDIYで取り付けた電装の配線が危険な場所を通っていたり、配線を接続するギボシ端子のオス・メスが反対になっていたりすることがある(車両火災の原因になる)」
なかでも多くのトラックドライバーたちに共通するのは「光り物好き」であるということ。それは電飾だけでなく、ホイールや車体なども丁寧に洗車し磨き上げてキラキラにする。
しかし、このキラキラ好きに関して、世間から聞こえてくるのは「眩しい」「後ろを走りにくい」という厳しい声だ。トラックのボディが鏡面になっていていたり、ボディ側面に付いている側方灯が眩しかったりして目が眩む、という声は絶えず聞こえてくる。
こうしたパーツや車体には、安全や衛生管理などの面から、装着されている正当な理由がある一方、なかにはドライバーがカスタマイズして嗜好性を高めたものがあるのも事実。
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