「パパ、おばさんがまた来てるよ」…霊感体質の娘だけに見えてしまう“おばさん”の正体とは【川奈まり子の百物語】
前を向いて
地下室には盛り塩をしてみたが、それからも時折、奇怪な現象が起きる。
「せめて妻の眠りを妨げないように……と思って、あやめを連れて菩提寺に通い、墓参りと供養に努めています」と彼は言う。
どういう機序か、たびたび親子で墓参りに行き、その都度、一緒に住職の読経を聴いていたら、娘の霊感が治まってしまったそうだ。
「不思議なことを言わなくなりました。地下室の現象も間遠になってきましたし、遠からず、何もかもふつうになるのでしょう。娘が成人したら妻が遺した金庫の宝飾品を贈るつもりで、その日を楽しみに生きていきます」
今はまだ、地下室のスピーカーから時折小さな音がブツブツと聞こえるが、もう気にならないという。
前を向いて生きる彼にとっては、過去の残響は恐るるに足らず、ということか。
筆者には、ユミさんも哀れに感じられて、やりきれない思いがするのだが……。
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妻の思い出と幼い娘を愛して、浩一さんはこれからを生きる――。【記事前半】では、かつての恋人との再会と、娘に備わった妻譲りのとある能力について述べている。
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