「パパ、おばさんがまた来てるよ」…霊感体質の娘だけに見えてしまう“おばさん”の正体とは【川奈まり子の百物語】

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「おばさんが来てる」

 あやめも敏感に異変に気付いているようだ。

 金曜日、浩一さんが帰宅すると、あやめが泣いていた。

「パパ、おばさんが来てるよ。ママが嫌だって。勝手に家に来るのはダメだよね? おばあちゃんに言ったけど、変なことを言うんじゃありませんって叱られた……」

 浩一さんはあやめを抱きしめた。

「おばあちゃんには後でパパから言っておく。それからママは安らかに眠っているから心配ないよ。……おばさんって誰? どこにいる?」

「知らない人。地下室にいるよ」

 浩一さんは地下室へ急いだ。

 ドアを開けると、モニターが点いていて、暗い画面にぼんやりとした女の黒い人影が映り込んでいた。

 ノイズが走り、突然、女の姿が明瞭になった。

 ユミだった。

「ずうっと、ずうっと待ってたんだよ」

 そのとき頭の中に美紀の声が響いた。

「浩一さん、その人を連れ込まないで」

 ユミは再び「ずうっと待ってた」と言うと、姿が暗く翳り、黒い画面に溶け入るように見えなくなった。

 プツンとモニターの電源がひとりでに落ちた。

ユミの現在

 オーディオルームは正常に戻った。浩一さんは深呼吸をして気を鎮め、スマホで同窓会のLINEグループの画面を開いた。

 幹事のアカウントを見つけてメッセージで問い合わせてみた。

「ユミさんが出席していたか知りたいのですが、わかりますか?」

 しばらくすると返信があった。

「いいえ。ユミさんは欠席でした。彼女は10年ぐらい前に交通事故に遭ったと聞いています。ご存命だとは思うけれど、風の噂では後遺症に苦しんでいるとのことで、同窓会に来たことは一度もありません」

 うっすらと予感があって幹事に連絡したのだったが、それでも浩一さんは衝撃を受けた。
 
 その後、彼は、ユミの現在について興信所を使って調査した。

 2週間ほどで結果が出た。

 それによれば、確かに、10年前、ユミは車の運転中に交通事故に巻き込まれて健康を損ね、その後は実家で両親に扶養されているとのことだった。

 さらに、事故があったのは彼が美紀と結婚したのと前後する時期で、そのときユミは同乗していた夫を亡くしていることも明らかになった。

 同窓会のとき、ユミはバツイチだと言っていた。あれは悲しい嘘だったようだ。

――いや、それとも彼女は夫と別れるつもりだった? 僕へのあてつけで結婚したものの、夫婦仲が破綻して、車の運転中に激しく争った挙句の事故だったとしたら?

 興信所の報告書を読んで、浩一さんは想像を巡らせることとなった。

 報告書には、こうも書かれていた。

《通院する以外には滅多に外出はせず、出掛ける際にも、必ず誰かが付き添って乗用車で移動しているようです》

 それでもユミは同窓会やカフェに現れた。

 健やかな肉体の幻をまとって……。

 彼はユミの怨念の深さを思い知らされて、心底恐ろしくなった。

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