「東半球」で米国の助けは望めない? トランプ大統領のベネズエラ急襲、「台湾有事」への影響は
【前後編の後編/前編からの続き】
年始早々、米国のドナルド・トランプ大統領(79)が怪気炎を上げている。南米・ベネズエラの大統領を一晩で拘束したかと思うと、他国にも軍事行動を仄めかし、国際社会を動揺させているのだ。予測不能な“お騒がせ”大統領の思惑を読み解く。
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前編では、トランプ大統領がベネズエラを急襲した思惑について、専門家の見立てを報じた。
米国民の受け止め方を、テレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏が語る。
「トランプ氏は滅茶苦茶な人物ですが、今回はその行動力と軍事力を好意的に評価している人が少なくありません。昔の米国らしい頼もしさを取り戻している感覚もあり、国民の間では“何かやってくれそう”という期待感が高まっています」
他方、同じ調査ではベネズエラ作戦についての評価は「支持」「不支持」「分からない・回答拒否」がそれぞれ30%ほどと拮抗しており、「ベネズエラに過度に関与することを懸念しているか」の設問では、72%が「はい」と答えている。矛盾しているかに見える結果について、『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』などの著書があるジャーナリストの会田弘継氏はこう読み解く。
「2020年の大統領選では、バイデン氏が勝利した520郡が米国全体のGDPのうち71%を占めていたのに対し、トランプ氏が勝利した2564郡は29%に過ぎませんでした。トランプ支持者とはいわゆる庶民であり、米国の深刻な経済格差に苦しむ人々です。彼らは矛盾した気持ちを持っていて、生活の行き詰まりから“いいぞ!”と作戦を喝采したい一方で“長期派兵や増税になったらイヤだな”という気持ちもある。そんな民意の表れでしょう」
トランプ支持者たちは「国際法」などはそもそも眼中になく、国内政治への不安を抱きつつも、作戦自体はおおむね好意的に受け止めているというのだ。
「東半球」で米国の助けは望めない?
また、トランプ氏は今回の作戦を説明する際、「ドンロー主義」という言葉を持ち出してもいる。かつてモンロー米大統領が米欧両大陸の相互不干渉を主張した「モンロー主義」の“ドナルド版”とされ、昨年に米政権が発表した「国家安全保障戦略」では「西半球」で覇権を握るという方針が示されていた。実際、
「トランプ大統領は作戦後、デンマーク領グリーンランドの領有に向けて意欲を強調しました。また、麻薬問題でコロンビアにも攻撃を示唆するなど、周辺地域への圧力を強めています」(国際部記者)
これも支持者の感覚が反映されたものだと、会田氏は語る。
「ベネズエラの原油輸出には中国・ロシアが関与しているほか、米国はグリーンランドも手をこまねいていては中ロのものになるとみています。こうした勢力を西半球から追い出し“地域”で覇権を取るというのがドンロー主義です。一方で国連機関などからの脱退もトランプ氏は指示しており、世界の警察からは降りようとしている。拡大した経済格差が埋まらない限り、こうした“自国第一主義”が求められ続けるため、トランプ路線は今後も引き継がれると思います」
駐米大使などを歴任した杉山晋輔氏もこう語る。
「昨年、米国の閣僚経験者や上院議員などと話す中で、ある方が“次はもう少し大人しいトランプがいい”と言っていました。つまり政策の方向性は間違っていないけれど、今回の拘束劇などはやり過ぎだと考える向きが一定数ある。あくまで懸念はやり方で、米国の国益を追求する政策が求められる状況は変わらないようです」
裏を返せば今後、「東半球」で米国の助けは望めないかもしれない。
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