手本にすべきは「イトーキ」の社長メッセージ? 「統合報告書」が“きれいすぎる”企業に投資家が要注意な理由
有価証券報告書は“履歴書”、統合報告書は“エントリーシート”
「外部業者に丸投げして作られた統合報告書は、読んでいてもどこも似たような内容ばかりで、オリジナリティが感じられません」
そう話すのは危機管理コンサルタントで「リスク・ヘッジ」代表取締役会長の田中辰巳氏である。
「私の実感では、企業が必要に迫られて仕方なく作っているだけの、まさに“仏つくって魂入れず”な統合報告書は全体の7~8割を占めています。せっかく発行しているのに、内容がありきたりで退屈であったりすると、むしろ企業のイメージにとってはマイナスではないかと思います」
有価証券報告書などの財務情報は就活生にとっての「履歴書」、非財務情報を含んだ企業のストーリーを記載する統合報告書は「エントリーシート(ES)」。田中氏はそう例えた上で、
「企業は学生が書いたESの出来栄えやオリジナリティを厳しく審査しているのに、いざ自分たちが統合報告書を作成する段になると、真っ先に外部に委託してオリジナリティも具体性もないものを投資家や就活生に向けて発行してしまっている。そのような企業は、自分では頭を使わず、ひな形や定型文ばかりの“借り物のES”で就活を乗り切ろうとするダメな学生と同じことをしているのです」
統合報告書に詳しい公認会計士の森洋一氏は、
「経営者や取締役会が関わることなく作成された統合報告書は、“きれいすぎる”傾向があります。読む人が読めば、やはり分かってしまいます」
と、こう語る。
「もし社長メッセージが“『グローバル化』が進行する中、わが社も『リーダーシップ』を発揮し……”のように、あまりに一般的な内容であったり、抽象的な表現が多すぎる場合は、外注されたか、制作担当者が代筆しただけの可能性も考えられます」
その一方、
「“10年後のわが社を取り巻く環境には……がある”“だからこそ、今、……という手を打っていく”といったように、経営者の立場でしか語ることのできない具体的かつ洞察力のある話が盛り込まれている場合、その統合報告書は、経営者の考えがしっかりと反映されている可能性が高く、投資家にとっても価値のある情報となります」
そう話す森氏は、優れた統合報告書の条件として、
「認識・意思・実績・評価の四つが漏れなく記載され、それぞれが互いに有機的に結合していること」を挙げる。
「例えば、“会社は今後このように成長します”という“意思”は示されているけど、その前提となるはずのビジネス環境に対する“認識”がなければ、その“意思”が実現するのかが分かりません。また、“実績”の報告に加えて、それをどう“評価”するかが示されることによって、さらに企業が価値創造を前進させていく力強い姿勢を伝えることができるはずです」(同)
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