まちがいなく凄い経歴だけど…なぜ「東大卒」と聞くと“羨望”“コンプレックス”“過度な幻想”が渦巻くのか
日本の大学の中で特別なポジションを取る大学、それは東京大学である。かくいう筆者も、「東大卒」と聞くだけで「ははぁ~」とひれ伏したくなるし、「東大中退」と聞くと「もったいない! なんで!」とつい言ってしまう。本人は東大卒であることをそれほど特別だとも思っていないし、中退したことをもったいないとも思っていないのだが、周囲が勝手に神格化するのである。【取材・文=中川淳一郎】
【写真】進学校から東大、そして野球部主将へ 杉浦海大選手の姿
別世界の人
私自身、東大関係者が子供の頃から多い環境で過ごしてきた。母方の祖父、実父、伯父がそうで、特に伯父は、私が小学校高学年の頃、夏休みになると私と伯父の息子(つまり私のいとこ)に100ページを超える自作のクイズ集を解かせることを殊の外楽しんでいた。このクイズで随分と雑学の知識は増えたことには今でも感謝しているが、この時から「東大出身者・東大生はなんでこんなに知識欲というか、知識への強迫観念が強いんだ?」と思うようになっていった。
父親にしても、とにかく麻雀を極めた人物であり、さらに姉の春休みの自由研究を手伝った際には、彼がイチゴの種を針を使って一つ一つ取って脱脂綿で発芽させていた姿を思い出す。その集中力には脱帽したほどである。
それは「勉強が好きな人達なんだなー」というのに加え、「一度『やる!』と決めたらやれる人」が東大に行くのだろう、ということも理解し、私自身は東大に入る自信もないため「別世界の人」といった扱いをするようになる。
受験の際にも、東大の高い壁を感じてさらに別世界の人という認定をするのだが、私が一橋大学に入って以降、今度は彼らが途端に身近な存在になってくるのである。なにしろ東大も一橋も、男女比がいびつなため、モテない! 1993年入学の我々の時代、大学の男女比は男がかなり多く、特に国立大学は8:1なんてことすらザラだった。モテない男は他大のモテない男と仲良くなるようなわけで、それは自然なことだった。
東大生が頭からウイスキーをかけて大興奮
そんな状況下、東大に通う同級生と駒場キャンパスから程近い、下北沢の安い中華料理店でクリスマスを一緒に過ごし「しょせん私立のチャラチャラしたヤツにオレらは敵わないんだよな~!」なんて自虐的に言い、ひたすら瓶ビールを空にして東大駒場寮でグースカ寝る、といった経験もした。
それどころか、私は社会人になってから東大生と二人で駒場寮に住んでしまうという暴挙に及んだ。大学当局が駒場寮を正式な寮と認めず、廃寮すると発表。これに対し寮生は抵抗する事態が発生した。大学当局は電気を停める措置を取るが、寮側は自家発電を導入、電気を寮に供給する。そんな中、会社員となっていた私の職場に自転車便のメッセンジャーの人が訪れた。よく見ると、寮生で友人のK君だった。
彼は「一部屋に二人いなくては貴重な電気を使う権利が得られないんだ」と、寮の窮状を嘆いた。そこで私は東大生になりすまして入寮、「2人いますよー」ということで、寮に入り込み、我々は日々楽しい生活をする。彼がファンである中日がセ・リーグを制覇した時、彼はテレビの前で頭からウイスキーをかけて大興奮!
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