まちがいなく凄い経歴だけど…なぜ「東大卒」と聞くと“羨望”“コンプレックス”“過度な幻想”が渦巻くのか
ロジックが全然通ってない
東大生だって嬉しい時にはこうやって天真爛漫に喜ぶのか、と、この時つくづく思ったとともに、「東大生に与えられた足枷」も同時に感じたである。彼にしても「なんで東大なのに自転車便のメッセンジャーをやるんだ?」と初期の頃訝しがられていたのだという。
私は大手広告会社に新卒で入ったのだが、東大卒の先輩・同期・後輩が冷遇されているように感じたこともある。その時の言われ方は「お前、東大卒のくせに使えないなぁ」というものである。そしてこう続く。
「このクリエイティブ業界では、東大みたいなお勉強だけができる人間じゃなくて、早稲田や慶應みたいに、私立のもっと柔軟で人生経験豊富な方が向いているんだよ」
暗に「東大出身者は官僚やお固いメーカーに行った方がいいんじゃね? クリエイティブ業界はお前らのいる場所ではない」という通告である。
だが、クリエイティブといったって、理詰めは必要だ。私が所属していたチームは5人だったが、プレゼンにあたって早稲田出身の3人は「なんかコレ面白いよなー」的な発想で企画を各自出してきた。そこに対して東大理系卒のY先輩(この3人より若手)が「だーかーらー、ロジックが全然通ってないの! ノリしかここには見えない! やり直し!」などと、若手ながらバシバシと先輩3人に指示をしているのである。
No.1ならではの苦労
この時「やっぱ東大卒ってやる時はバシッと仕事をやるわな。スゲー優秀だ!」と私もひどく感じ入った。しかし、「東大卒の大蔵官僚がノーパンしゃぶしゃぶを堪能」やら「東大卒の議員が汚職」といった不祥事の方が嬉々として報じられる現状があった。
池袋暴走事故の「上級国民」扱いされた飯塚幸三も東大卒で、そのエリートっぷりが批判の対象となった。
かくしてメディアや一般からは「東大卒は完璧な人である」というイメージがあったうえで、不祥事があれば苛烈に叩く。だが、実際彼らと仕事で付き合うと地頭の良さは感じることが多い。何か修正を依頼したら、思っていた以上のアウトプットを出してくれる。しかし、「私学のノリの良さには敵わないよ……。結局ビジネスはそちらが大事だ」と出世しなかった50代東大卒男性から居酒屋でその悲哀を聞いたこともある。
No.1ならではの苦労ってものはあるのだろうな……と思う。何しろ「東大卒引きこもりの末路」的な記事は、ネットニュースの世界では大人気なのだから。これも日本人が持つ東大コンプレックスと過度な幻想の表れだろう。
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