“一流企業の証明書”「統合報告書」が暴き出す不適切会計の前触れ 「ニデック」の報告書に“書かれなかったこと”とは

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 ここ数年、企業が「統合報告書」を発行することが一種のブームになっているのをご存じだろうか。2024年の段階で日本の上場企業のうち、4分の1を超える1150社もの上場企業が発行し、統合報告書は“一流企業であることの証明”になりつつある。その会社の「未来の姿」を描くレポートだが、クオリティは玉石混交で、時にそこには決算報告書や有価証券報告書だけでは見抜けない企業の「暗部」が覗く。「読み方」さえ身に付ければ、「優良企業」と「ダメ企業」を見極める重要なツールとなろう。

※本稿は「週刊新潮」2026年1月15日号の特集記事【発行企業は1000社超 統合報告書で「良い会社」「ダメな会社」を見極める】の一部を再編集したものです。

 投資、就職、あるいは取引の際、その対象となる企業の善しあしを見極めるために何を参考にするべきか。ホームページ? 決算報告書? 有価証券報告書? それらはその企業の「現状」を伝えてはくれるが、「未来」までは分からない。

 企業の将来性や持続可能性まで見通したいのであれば、参照するべき開示資料はただ一つ。それこそ、ここ数年で作成する企業が右肩上がりで増え続けている「統合報告書」である。

「日本で統合報告書を発行する企業が本格的に増えてきたのは、2020年頃からでした」

 そう語るのは、「リスク・ヘッジ」代表取締役会長の田中辰巳氏だ。

「24年の段階では、約4000社ある日本の上場企業のうち、4分の1を超える1150社もの上場企業が統合報告書を発行しています。トヨタやホンダなど、名だたる大企業が発行している以上、統合報告書は“一流企業であることの証明”になっている側面があり、統合報告書を発行しないのは“遅れた会社”とする見方も出てきています」

 そうした事情ゆえ、ビジネスの世界では「常識」となりつつあるものの、一般的にはまだまだ馴染みが薄い統合報告書。端的に言うとそこには、「将来的に自社の企業価値をどのように増大させてゆくのか」、つまりその企業の「未来」の姿が描かれている。

“非財務情報”の重要性

 一橋大学大学院経営管理研究科教授の円谷(つむらや)昭一氏が解説する。

「例えば、製薬会社における新薬の化学式や、治験の状況などの情報は、今後財務的な価値を生む可能性があるにもかかわらず、有価証券報告書などの法的開示書類には載せる余地がありませんでした。そこで、そうした非財務情報と財務情報を統合させたものとして、日本では13年頃から統合報告書が作成されるようになったのです」

 これまで多くの企業の統合報告書を読み込んできた「Unipos」代表取締役の田中弦(ゆづる)氏は、

「企業の四半期決算短信や中期経営計画に書かれているのは、競合との差別化戦略や新規事業の業績、来期に期待される利益など、財務的な情報ばかりです。しかしよく考えてみれば、その企業を語る上で、財務情報だけでは不十分であることに気づくはずです」

 として、こう話す。

「食品のサプライチェーンを有する企業が、パーム油を原材料として仕入れており、それが児童労働によって賄われている現状を放置していたとします。その企業は重大な社会的責任を果たしていないことになりますが、そういった社会関係資本についての情報は財務的な側面からは見えてこない。そのため、財務情報と非財務情報をセットで語ることが重要なのです」

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