なぜ「ヤンキーの恋愛」に世界が熱狂? Netflix「ラヴ上等」が覆した“リアリティショー”の常識

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日本のヤンキー文化

 海外での人気も見逃せない要素である。日本のヤンキー文化は、海外から見るとひときわユニークに映るようだ。彼らの独特のファッションや言葉遣いや振る舞いは、日本特有のサブカルチャーとして興味を持たれている。そこに恋愛という普遍的なテーマが組み合わさることで、文化的な特殊性と人間の普遍的な感情が融合して、国境を越えて多くの人の共感を呼んだ。

 従来の恋愛リアリティショーに食傷気味だった視聴者にとっても「ラヴ上等」は新鮮な驚きをもたらした。洗練された会話や計算された駆け引きではなく、時に子供のように純粋な感情のぶつかり合いを見せるヤンキーたちの振る舞いは、見ていて予測がつかない面白さがある。参加者たちが社会的な常識やマナーにとらわれず、自分の気持ちに正直に行動する姿勢も痛快である。

 コンテンツ自体に力があるので、SNSなどを通して人気が広がっていったというのも大きい。印象的なシーンや名言が次々とシェアされて、実際のコンテンツを見ていない人が興味を持つきっかけとなった。特に「水はやべぇだろ」というフレーズはインパクトが強く、ネット上では桁違いのバズりワードとなった。

 恋愛リアリティショーというジャンル自体はすでに飽和状態にあるが、「ラヴ上等」はそこに新たな可能性を示した。設定やキャスティングの工夫次第で、まだまだ視聴者を驚かせ、感動させることができるということを証明した。ヤンキーという恋愛リアリティとは相容れないように思える要素が、実は最高の化学反応を起こす組み合わせだったのである。

 このコンテンツの成功は、エンターテインメント業界に1つの示唆を与えている。常識や既成概念にとらわれず、一見ミスマッチに思える要素を大胆に組み合わせることで、予想を超える魅力が生まれる可能性があるということだ。「ラヴ上等」はその挑戦が見事に実を結んだ好例と言えるだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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