転勤について来てくれなかった恋人 その後、音信不通になり…自宅に押しかけて知った「秘密」

  • ブックマーク

転勤を機にプロポーズすると…

 ふたりはゆっくりと関係を熟成させていった。そして2年たち、彼に転勤の話が持ち上がったとき思い切ってプロポーズしたという。だが彼女は首を縦には振らなかった。

「どうしてなんだ、こんなにうまくいっているのにとつぶやいたら、『結婚はこりごりって言ったはずよ』って。そうだけど、僕は転勤になるんだよ、遠方だから週末ごとに帰ってくるわけにはいかない。秋奈と一緒にいたいんだと情に訴えたら、『月に1度でもいいじゃない、会えれば』と。納得はできなかったけど、別れたくはなかった」

 悩んでいるうちに転勤の日が迫ってきた。転勤前の最後の週末を一緒に過ごす約束をしていたのに、秋奈さんは待ち合わせ場所に来なかった。連絡もとれなくなり、彼女の自宅へ行ってみたがその日も翌日もいなかった。

「そのまま僕は転勤しました。彼女からは連絡もないまま。携帯もつながらなくて、僕はとうとう聞いていた彼女の会社に連絡してみたんです。すると彼女は長期休暇をとっているという。何かあったのかと聞くと、個人的なことだから教えられないと」

 2年もつきあっていたのに互いの友人を紹介するような機会はなかった。それでもなんとか彼女が今どこにいるのか知ることはできないか。彼は知恵を絞った。

「そういえば彼女、住んでいるマンションの隣近所とは親しいというようなことを言っていたのを思いだしたんです。会うのはだいたい僕の部屋だったけど、何度か彼女のところにも行ったことはあった。それで両隣の人に聞いてみようと張っていたら、親しい人が見つかりました」

嫌な予感…

 彼女の母親世代の女性だった。彼女の仕事関係の方ですかと聞かれたので、仕事で知り合った友人だと答えると、「かわいそうにね。お子さんが病気になられて。あわてて実家に帰って行きましたよ」と言われた。

「とっさにだんなさんはどうされてるんですかねと聞くと、『ほら、彼女はずっとこっちで出稼ぎ状態だったでしょう。でもだんなさんはあちらで子どものめんどうをよく見ているようですよ』って。つまり彼女は結婚していて、ひとりで東京で仕事をしていたというわけなんです。そこにどんな事情があったのかはわからないけど……」

 どうしてこういう目にあうのだろうと彼は言った。それきり秋奈さんとは連絡がとれていない。紀代乃さんのときと同じように、いや、それ以上にショックを受けたと慎二さんはため息をついた。それから1年弱、今年、彼は厄年なのだという。

「もうひとつくらい手痛い目にあうのかもしれませんね。なんだか女性運が悪いですよねえ。前世で何かしたんでしょうか」

 前世なんて信じてないけどと、彼は力なく笑った。彼は徹頭徹尾、相手女性の悪口は言わなかった。ざっくりいうと、「とにかく、いい人」なのである。いい人だからこそ利用されてしまうのか、いい人だからこそ自分の欲求を通しきれないのか。もっと自分勝手に生きてみたら、何かが変わるのだろうか。

 ***

 慎二さんが受けた、人生二度目の“裏切り”。騙され続ける己を恨んでいそうな素振りもうかがえるが、それも無理ない。最初の“被害”となった紀代乃さんとの出会いは【記事前編】で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。