ローン金利が上昇しても騒ぐ必要はない マンションが買いやすい時代が近づく理由

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低金利だからマンション価格は高騰した

 次に、金利が低いからこそ投機の対象になりやすい、ということを考えてほしい。

 国土交通省が11月25日に発表したデータでは、23区内の大規模新築マンションでは、購入して1年以内に売買された物件が1月から6月までで575件に達し、このペースは前年の約5倍だという。むろん大半は投機目的と思われる。

 これにはさすがに不動産協会も、1つの物件あたりの購入戸数を制限したり、契約や投機の際の名義を厳格化したり、売買契約を結んでから引き渡しまでのあいだに売買するのを禁じたり、といった対応策を発表した。しかし、そもそもなぜ投機目的のマンション購入が多いのかといえば、低金利だからである。

 マンション価格の高騰は、前述のアベノミクスからはじまった。日銀は国債を大量に買い入れ、市場にお金を供給し、金利を抑えて円安に誘導したわけだが、その結果、ゼロに近い金利でお金を借りて不動産投資する人が増えた。お金を持っていても金利がつかないのだから、不動産に投資して高い利回りを期待するのは、当然ともいえる。要は、お金をダブつかせても、企業の借り入れ需要は増えなかったので、金融機関は、不動産の開発業者や購入者への融資を増やした。

 結果として生じたのは、高値で買ってくれる人がいるので、開発業者は強気の値づけをする、という悪循環だった。こうなると、新築マンション価格はどんどん上がり、投機の対象としてはうってつけだと認識されてしまう。低金利、それも実質的にはマイナスの金利で資金を調達して購入すれば、年に2ケタの価格上昇が見込める以上、投機目的でマンションを購入する人は減らないだろう。

 したがって、マンション価格が下がることを期待するなら、金利は上昇することこそ望ましい。新築マンションの価格が上がり続けるのは、低金利が続いているからなのだ、と考えれば、金利の上昇を違う目で眺めることができる。

いずれ無理せず買えるはず

 そして最後に、現在の激しい人口減少と、それが解消される見込みがないという状況を考えてほしい。いずれマンションは余り、投機の対象にはならなくなり、よほど大量の移民でも受け入れないかぎり、無理をしなくても購入できるようになるはずである。

 朝日新聞の推計によると、2025年に日本で生まれた子どもの数は66万8,000人程度にとどまるという。24年には出生数(確定数)が68万6,173人と、統計がある1899年以降の最少記録を更新し、はじめて70万人を割った。こうして衝撃が走ったばかりだが、さらに2万人程度減ることになる。

 出生数の減少ペースは想像を絶している。国立社会保障・人口問題研究所は20年の国勢調査にもとづき、将来の人口を推計している。そこでは、25年の出生数は74万9,000人と見込まれ、66万人台になるのは15年後の41年だとされていた。すなわち、少子化のペースは国の想定の何倍も速くなっており、25年の日本人の人口は、前年より91万2,161人も減った。

 そんな状況下でマンションの新築を今後も続ければ、近い将来、都内においてもマンションはダブつくのは必至である。加えて、金利がある世界が当たり前になれば、投機の対象から外れ、一気に値崩れしかねない。だから気をつけるべきは、いま値上がりしているからといって急いで手を出さず、購入するにしても、将来の値崩れの可能性を想定してローンを組むなりすることだろう。

 金利が上がると、テレビや新聞はすぐに住宅ローンへの影響を論じ、目先の金利負担が高まることだけを報じるが、そんな近視眼的な報道に左右されず、取り巻く状況のなかで金利がどんな意味を持っているか、考えてほしいと思う。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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