疑われないよう「家の新築を延期」「披露宴を縮小」…1000万円が“消えた”昭和の銀行、行員たちが陥ったパニック状態

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思い出される昭和の“銀行犯罪”

第1回【4200万円入りのジュラルミントランクが消えた…昭和の“銀行事件”はなぜ未解決が多いのか ベテラン刑事も漏らした「後味の悪さ」】を読む

 銀行に預けられた金品を行員が盗む――。三菱UFJ銀行の貸金庫窃盗事件をめぐり、同行の元行員・山崎由香理被告(47、当時は今村姓)が逮捕されたのは2025年1月14日のこと。他行でも窃盗事案が報告されるなど、2025年は銀行業界への信頼が根底から揺らいだ年だった。

 その一方、なんとなく既視感を覚えたという人も多いだろう。実は昭和の時代にも、金融機関から現金などが“消える”事件は多数発生していた。現在ではありえないが、当時は未解決になるケースも多かったという。そんな驚きの時代とその背景を、当時の「週刊新潮」で覗いてみよう。

(全2回の第2回:以下、「週刊新潮」1984年1月19日号「銀行『現金盗難事件』がすべて『時効』になる『行内雰囲気』」を再編集しました。文中の肩書き、年齢等は掲載当時のものです)

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疑われないよう大きな買い物を控えて

 昨(1983)年11月、時効を迎えたのは〈H銀行〉だ。事件が起こったのは昭和51(1976)年の11月。I支店から本店へ輸送されてきた1250万円入りのトランクを金庫に収め、翌日、開けてみたら、250万円を残して1000万円が消えていたのだ。

 250万円を残した手口、そして、外部からの侵入の形跡がないことなどから、こちらも「内部犯行説」が強まった。その結果、疑われたのはI支店の支店長、現金輸送車の運転手、金庫を開けた本店の課長らであった。

 地元の新聞記者の話。

「警察は最終的に5人に絞って、その中には家宅捜索を受けた行員もいます。しかし、銀行側は当たり前のことですが、内部犯行説には否定的で、捜査には積極的には協力しなかったようだ。それでも行員たちは警察に疑われるのを恐れ、家の新築を取りやめたり、大きな買い物を極力控えるようにしていた。結婚披露宴なども縮小する者もいて、一種の集団ノイローゼにかかったような状態でしたね。一度に10万円もの買い物をすると、たちまち“犯人じゃないか”などと陰口が聞かれ、当初はパニック寸前でしたよ」

 家宅捜索を受けた行員など、針のムシロの心境だったろうが、それでも、“今やめたら犯人にされてしまう”といって、とうとう時効までガンバリ続けたという。

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