闇バイト連続強盗事件「警察はシグナルを完全に“攻略”できたわけではない」首謀者たちの“油断”が突破口に「18件すべてを挙げるのは厳しい」という見方も
首都圏連続強盗事件の首謀者4人摘発まで要した時間は1年あまり、捜査は困難を極めた。行く手を阻んだのは、首謀者グループが連絡手段として用いていた通信アプリ「シグナル」である。もし彼らがこのツールを完璧に使いこなし、「ミス」も犯さなかったなら、今も逃げ続けていたかもしれない。(前後編の前編)
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1年かけて100人体制で750台のスマートフォンを解析
昨年12月5日、東京・桜田門。警視庁17階の大会議室で異例の記者会見が始まった。カメラの前に居並んだのは、警視庁の親家和仁刑事部長を中心に、警視庁と神奈川、埼玉県警の捜査1課長と千葉県警の捜査4課長。警察幹部たちは、2024年8月~11月にかけて18件発生した連続強盗事件の首謀者4人を特定し、強盗傷人罪などで逮捕したと発表した。
都道府県を跨いで合同捜査本部が設置されることは珍しくないが、検挙時、記者会見まで合同で開催することは滅多にない。「トクリュウ犯罪は必ず撲滅させる」という強いメッセージを社会に出す狙いがあったとみられる。
会見で明かされたのは、警察の執念が伝わってくる大々的な捜査だった。
「捜査員100人体制で、実行役などから押収した750台のスマートフォンを解析。それに加え、供述や全国警察からの関連情報を集約し、断片的なものを含めて一つひとつパズルのように組み合わせていった。そして1年かけて事件の構図を作り、今回の首謀者逮捕に至ったのです」(社会部記者)
なぜそこまで手こずったのか。
「事件が起きるたび、末端にいる実行役、その上の回収役などは、防犯カメラのリレー捜査などで検挙できた。しかし彼らを絞り上げて指示役は誰かと聞いても、彼らは本当に知らないので答えられない。通常では有効な突き上げ捜査が行き詰まってしまうのです」(同)
シグナルの完全復元は不可能
首謀者たちが闇バイトたちに指示するツールとして「シグナル」を使っていたからだった。シグナルではやり取りのメッセージが全て暗号化され、一定期間を経るとメッセージが消える機能がついている。期間はユーザーが任意で設定でき、1分とすることも1日とすることも可能。消えた記録はアプリ運営会社側のサーバーにも残らず、第三者が内容を確認できない仕組みになっている。
「末端たちから押収したスマホの中には、消し忘れたシグナルのやり取りが一部あったと思われます。またシグナルは特別なソフトを使うことで一部を復元することもできる。ただし一部であり、完全には復元できない」(同)
厄介なのは仮に片方にそっくりやり取りが残っていたとしても、連絡を取っていた相手についてはアカウント名しか分からない点だ。
「XであればX社に問い合わせれば、アカウントを使っている人間の素性を教えてくれるのですが、シグナル社は一切そのような問い合わせに応じてくれないのです」(同)
この壁を打ち破る突破口となったのは、偶然起きた別事件だった。昨年11月7日、千葉県警は福地紘人(26)、斉藤拓哉(26)、村上迦楼羅(27)の3容疑者を30代男性に対する傷害容疑で逮捕した。逮捕した場所は成田空港で、3人は韓国に向かおうとしていた。
1年後、連続強盗事件の首謀者として逮捕された4人のうちの3人である。
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