“働いてまいりますチョコ”も発売…台湾で高まる「高市早苗」人気 有事発言が加速させた親日ムードの背景にあるもの

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「台湾人バッジ」が雨後の筍式に広がる

 韓国で「中国バッシング」旋風が起こった際に、台湾人が中国人と間違えられて不当な扱いを受けないよう制作された「我是台湾人(私は台湾人、中国人ではない)」バッジがある。現在、海外に行く台湾人の間で、このバッジを荷物や胸に装着することが流行になっている。中台関係に詳しい識者はこう話す。

「たとえば『我々は天安門を忘れない』等のバッジを胸にすることは、この事件を歴史から葬りたい中国当局の方針に合わないので、大陸中国人にはできないはず。だから台湾人にとっては有効な手段なのです」

 高市人気の背景には、こうした台湾人意識の高まりがある、と見るべきだ。

高市人気と日本へのエールは今後も続く

 以上のように、高市氏の発言を好意的に受け止めた台湾社会だが、反面、度重なる中国からの圧力を受けてきた経験から、過度に中国を刺激することは、日本のためによくないとも思っている。

 台湾政府からすれば、安倍晋三元首相の後継と目される高市氏が、就任早々に台湾重視の発言をしたことには歓迎の立場である。蔡英文前政権(2016~2024)以来、与党・民進党は中国の武力行使抑止のため、日米連携強化に注力してきただけに、今後の日中関係の行方を注意深く見守っている。

 現在の頼清徳政権は、2025年に国民党へのリコール運動を仕掛け、少数与党から脱却することを目指したが失敗。勢い付いた野党は、多数議員を擁する立法院(国会)で頼政権を追い込んでいる。中国当局はこの「内輪もめ」がどう展開するかを外から眺め、布石を打つ構えだ。

中国当局への警戒は、日台ともに

 さらに言えば、日米連携重視の与党・民進党と、中国との対話を基調とする国民党とは外交面でも逆の立場だ。台湾内に全く異なる2つの外交方針があるので、有権者は先が見通せずに、次の選挙(2026年に首長選挙、2028年に総統選挙が予定されている)でも難しい選択を迫られることになるわけだ。

 中国当局は、こうした点も考慮して、軍事力ではなく認知戦を仕掛けて台湾の孤立化を図ってくることだろう。同様に、日本へも色々な形で圧力を加えてくる事を日本政府、民間人は警戒するべきである。特に、中国に拠点を持つ日系企業は自覚を持ってリスク対策を急ぐことだ。

 実弾やロケットが飛ぶ戦争ではなく、コストを抑え「戦わずして勝つ」ことを目指す中国政府が、周辺国、隣国をどのように揺さぶるか。「台湾有事」の折には「転ばぬ先の杖」を仕込んでおく事が肝要なのである。

広橋賢蔵(ひろはし・けんぞう)
台湾在住ライター。1965年生、1988年北京留学後、1989年に台湾に渡り「なーるほどザ台湾」「台北ナビ」編集担当を経て、現在は台湾観光案内ブログ「歩く台北」主宰。近著に『台湾の秘湯迷走旅』(双葉文庫)などがある。

デイリー新潮編集部

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