「冬こそ“裸で睡眠”を試してほしい」と専門家が語る理由 枕のベストな高さ、羽毛布団の選び方も徹底解説

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第一夜効果

 理想の寝姿勢の話に戻ると、枕と共にマットレスも関係してきます。フワフワとした浮遊感が味わえる低反発マットレスを好まれる方もいますが、購入の際は次の点に十分注意してください。体がやや沈み込み、包まれた感覚になる低反発マットレスは、たしかに安心感を得やすい面があります。一方、体の一部分だけが沈み、「横一直線」の理想の寝姿勢からはかけ離れてしまうケースもありますので、箇所によって反発度を変えてあるなど、自分の体形に合うものを選ぶことをお勧めします。

 掛け布団、枕、マットレス……。いくら自宅の寝具環境を整えたとしても、旅館やホテルだとなかなか眠れない。そんなストレスを抱えている方も多いと思います。ちなみに、普段とは違う環境に置かれ、安心感を得られずに寝付けない現象を、睡眠科学の世界では「第一夜効果」と呼びます。

 この年末年始、旅行などで外泊の機会が増えたことでしょう。旅館やホテルでどうしても眠れないという人の中には、「マイ枕」を持ち運び、少しでも普段と同じ環境に近付けようと努力されている方もいますが、出張や旅行の度に荷物となる枕を持っていくのはかなり面倒です。

 そこで役立つのが「香り」です。例えば、自宅で枕カバーを洗濯する際にラベンダーの香りの柔軟剤を使っている場合、旅先にラベンダーの香りのサシェ(香り袋)やピローミスト(枕などに吹きかけるアロマスプレー)を持っていってください。

 寝室空間に普段と同じ香りが漂っているだけで安心感が得られ、第一夜効果が減少して寝付きやすくなります。いずれも小さくて軽いので持ち運びが便利なのがメリットです。

 ここまで寝具による快眠術を説明してきました。もちろん、“本格的な快眠”のためには、例えば「寝スマホ」をやめたり、夕食を早めに取ったり、入浴時間を工夫したりといった生活習慣の改善が必要となるでしょう。でも、それって現実的には結構難しいですよね? 寝スマホを習慣にしている方が、今日からいきなりやめるというのは、よほど意志が強くないとできないと思います。

 しかし、寝具に気を配るのはそこまでの意志を必要としません。そして、寝具を変えると、「寝ることの至上の心地よさ」を寝入る瞬間だけでも味わうことができます。一瞬でもその感覚が得られれば、一晩中心地よく寝ていたい、そのためには生活習慣を見直してみようと、スイッチがオンになる可能性があります。逆に言えば、その感覚なくして生活習慣を変えるのは至難の業なのではないでしょうか。

 従って、私はこう考えています。よき寝具は快眠生活、すなわち健康的な生活への「入り口」である、と。

乙丸屋久兵衛(おとまるやきゅうべえ)
老舗寝具店12代目店主。1980年生まれ。元文元(1736)年創業の歴史を誇る寝具店「眠りにまっすぐ乙丸屋」(石川県野々市市)の現店主。「寝具と快眠」を代々追究し続けてきた。社員の生産性向上を目指した企業向け快眠セミナーなども実施。2025年7月、著書『とにかくぐっすり眠りたい』を出版し、寝具からアプローチする睡眠法を指南している。

週刊新潮 2026年1月1・8日号掲載

特別読物「寝床が冷える冬にこそ知りたい 最強の『寝具』快眠術」より

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