中年男性の悩みと孤独を等身大でぶつけた4分間の衝撃 ドンデコルテがM-1で示した「演説系漫才」の新境地
独特の漫才スタイル
昨年末に行われた漫才コンテスト「M-1グランプリ」で、優勝したたくろうに勝るとも劣らないほどの強烈な印象を残したのが、準優勝のドンデコルテである。彼らの「演説系漫才」と呼びたくなるような独特の漫才スタイルは、大きな反響を巻き起こした。ドンデコルテの漫才がこれほどまでに評価されたのはなぜなのか。【ラリー遠田/お笑い評論家】
***
【写真】「パンパンやな」…師匠がまさかのポーズ。M-1“小粒な”審査員も
まず注目すべきは、ボケを担当する渡辺銀次の落ち着いた語り口である。1本目のネタでは、渡辺は40歳・独身にして「厚生労働省の定めた基準によると貧困層に属します」と自虐的な自己紹介をした。スマホを触らないようにする「デジタルデトックス」の効能を熱弁しながらも、自分自身はそれができないとつぶやいた。
相方の小橋共作になぜなのかと尋ねられて「自分と向き合うのが怖いんです」と返した。彼は厳しい現実から目を背けるために、積極的にスマホの世界に溺れていたのだ。情けないことを演説のような口調で堂々と語ることで、大きな笑いを起こしていた。
漫才中の渡辺の語りの勢いはとどまるところを知らず、最終的にはセミナー講師のような口調で「スマホを触りましょう。はい、スワイプスワイプ。現実をスワイプ」「いいですか皆さん。目覚めるな!」と観客に語りかけてみせた。
2本目の漫才も渡辺の情けないキャラクターを軸にした内容だった。悩める中年男性である彼は、LEDを体に巻いて光りながら自転車で街を走り回る「街の名物おじさん」になろうとしている。現実と向き合わず、意味や価値から逸脱したいと語る彼は、光ることで「私」という意味からも逸脱したいのだと主張する。ここでも彼はギャップによる笑いを見せつけていた。
彼らの「演説系漫才」が評価された最大の理由は、その主張がきわめて現代的だった点にある。貧しい中年男性がスマホに依存して現実から目をそらす心理というテーマは、多くの人に理解されやすいものだった。それを演説のように強い調子で語ってみせることで、観客はその心理に部分的には共感しつつ、必死さや悲壮感を面白く感じた。切実で真面目な主張が、かえって滑稽さを帯びるという構造が立ち上がっていた。
[1/2ページ]


