東京で話題になるのは“死亡事故”ばかりだが…地方で「お餅」が“重要な役割”を担う納得の理由

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 お正月に話題になるワードのうち常に上位に位置するものの一つが「餅」である。しかも、餅が話題になるのは大抵、「高齢者が餅をのどに詰まらせる事故が発生した」といった、ネガティブな事案が発生した時だ。最悪、亡くなってしまうケースも少なくない。そして、そうした話題に対して「なんで餅ごときにそこまで命をかけるのか……」といった反応が都会人からは来る。

 だが、地方民にとって餅は、単なる食品ではなく、かなり重要な意味を持っているのだ。毎年12月28日辺りは餅をつく日となっていることが多い。私は佐賀県唐津市在住で、12月28日に地元の音楽ライブへ行ったのだが、出演したさるアーティストが「田舎の日常あるある」的にこう言った。【取材・文=中川淳一郎】

餅つきを終えないと年が越せない

「今日のライブ、来られない人の多くは『28日は餅つきの日でしょ? ライブに行く余裕はないよ!』と僕に言いました。そんな重要な日なのに、餅つきをせずわざわざ僕のライブに来てくれた皆さんありがとうございます!」

 事実、私も昨年末に農家の友人宅の餅つきに参加した。当主の孫の4人きょうだい(男3人、女1人)に加え、長兄(高校3年生)の同級生男子4人も来て臼に入れた餅を杵でついていく。杵を持った3人がリズムよく順番に餅をつき、時にタイミングが重なってしまった時は「お前早過ぎだぞー!」なんて言っている。

 部屋の床には新聞紙を並べ、その上に粉の入った容器を置き、丸めた餅にまぶして、並べていく。少年達は粉を顔面に塗り、おしろいのようにして互いに笑い合っている。その後は、醤油大根おろしにつけて餅をひたすらかっくらう。

 あらかた食べた後は、ビニール袋に入れて餅つき参加者に配るとともに、来たる正月のために保管をする。元日は雑煮を食べ、年末年始の来客には餅を配る。かくして餅が人と人の縁を作ってくれるのである。当然仏壇の先祖にも餅を供える。何らかのお祭りがある時は、祭りの終了直前のクライマックスに壇上から紅白の餅が来場者に投げられ、各自家に持ち帰る。

 メディアが餅を話題にする時は「高齢者が喉に詰まらせ亡くなる」といったものが多く、「細かく切って食べる」「詰まらせた場合は首を後ろから叩く」など危険回避術が多くなりがちだが、現代の日本でもこのように年末年始の文化として若い世代にもその文化は受け継がれている。何しろ、餅つきを終えないと年が越せないとすら思うほど重要視する向きもあるのだ。

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