60歳夫の「人生の肝」3人の女性 別れない妻、元・不倫相手…自称「最後の恋」のお相手は
3度目の恋の相手、奈穂美さん
いい大人が、中学生みたいな恋をしたんですと寛一さんは照れた。相手は会社の隣のビルにあるレストランのオーナー女性だ。新しくオープンした店でランチもやっているため、ときどき利用するようになった。
「感じのいい女性なんですよ。もちろん、相手は客商売ですから、それだけでは惚れませんが。たまたま大学時代の旧友たちと集まる話になったとき、その店にしようと思ったんです。オーナーに話したら、とても親身になって料理や費用の相談に乗ってくれて。大学名を出したら『私も同窓生です』って。3歳下でした。そこから一気に打ち解けて。用もないのに顔を出したり、そこでメニューにない家庭的な料理を出してもらったりするようになった。舞香と顔を合わせづらくなったのはそのころですね。心の中だけで思っている女性がいるために、いちばん親しい女性と顔を合わせるのがつらくなったのは初めてです。それだけ彼女への思いが強かったんだと思う」
オーナー女性は奈穂美さんといい、スレンダーで身のこなしのきれいな人だという。もともと両親が別の場所でレストランを経営していたのだが、父の急死で店が立ちゆかなくなった。当時、奈穂美さんは夫の赴任で海外にいたという。
「そしていろいろなことを整理し、親戚の子が料理人として修業を積んだのち、この店をオープンさせたそうです。さまざまな人生経験を経てきたせいか、おっとりした雰囲気を醸し出しながら腹の据わったところも見せる、魅力的な女性です」
「この恋は成就しないほうがいいのかな」
ただ、今も舞香さんからはときどき夜中に電話がかかってくる。彼女はひとりではいられないのかもしれない。そんな彼女がかわいかったはずなのにと寛一さんの胸が痛む。
「裕美子とも舞香とも違う、奈穂美さんという女性に出会ってしまったのが僕の不幸かもしれません。でももしかしたら、この恋は成就しないほうがいいのかなと思うこともあるんです。週に2回くらい、奈穂美さんの店に行くし、店が休みの日に外で会ったこともありますが、どうにも恋心を告白できずにいるんです」
それなりに女性には慣れているはずの寛一さんをもってしても、告白さえできない女性がいるとは。それだけ彼が純粋に憧れているということなのだろうか。
「僕の人生の肝になっている3人の女性ですけど、もちろん短期間の恋などを入れれば、もう少し恋の経験はあるんですよ。こういうタイプならこうやって攻めればいいかななんて自分なりの攻略法ももっているつもりだった。だけど年齢を重ねた今、妙に『好き』という言葉の純度が上がってしまって、言いたいけど言えないという状況にあるんです。どういうことなんでしょうね、これ」
俯き加減になっている寛一さんが、自分の濃すぎる恋心に対して途方に暮れている青年のように見える。還暦にして、純度の高い恋に迷えるのは幸せなことかもしれない。どんなに年を重ねても、自らの恋心に完璧な対処をするのはむずかしいことなのだろう。
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齢60にして、告白できない恋心を抱えている寛一さん。この点だけをかんがみればほほえましくもあるのだが、まだ彼に未練がありそうな舞香さん、婚姻関係を解消していない裕美子さんとの関係はどう整理するのだろうか。寛一さんと裕美子さんとのなれそめ、彼の育った家庭環境については【記事前編】で紹介している。
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