「ビジュ爆発」、“抱擁”特典も…滝沢、芝、平子と続く「イケオジ芸人」ブームの正体

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「ちょうど良い憧れ」

 イケオジ芸人として人気の3人に共通するのは、いずれも既婚者であるということ。既婚者ならではの余裕が女性ファンを惹きつけている。そこには「恋愛市場から降りている」という状態がもたらす安全性があることも無視できない。既婚者であり、恋愛的なアピールを前面に出していないことが、ファンにとっては心地よい距離感を生む。過剰に夢を見せられることもなければ、裏切られる不安も少ない。あくまで「推し」として健全に消費できる存在であることで、応援のハードルが下がっている。

 イケオジ芸人のファンは、若い芸人のファンに比べると、年齢層も高めであると考えられる。10代や20代前半の頃のように「手が届きそうな異性」としてアイドルを見つめる感覚から、少し距離を取った鑑賞眼へとシフトしている。年下の若手芸人や俳優にときめくよりも、同世代や少し年上の男性のダンディな魅力を安心して楽しむモードに入っている人が多いのだろう。

 そして何より重要なのが、こうした人気が常に「お笑い」という文脈に回収されている点である。写真集やグラビアなどの「ビジュアル売り」を、本人もファンも半ば冗談として受け止める余白がある。本人たちも照れや自虐を交えながらそこに向き合っていて、ファンもそれを笑いとして共有している。アイドル的消費でありながら、本物のアイドルほど「ガチ」ではない。この絶妙な温度感こそが、イケオジ芸人という存在を成立させている最大の要因なのかもしれない。

 イケオジ芸人の人気は単なる一過性のブームではない。若さを売りにせず、夢や幻想を振りまくわけでもなく、芸人としての冗談に逃げることも許されている――イケオジ芸人の人気は、今の時代における「ちょうど良い憧れ」の形なのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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