ものまねタレントの大御所「コロッケ」を支える“あおいくま” 最愛の母から教わった「魔法の5文字」の深い意味

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あおいくま

 ところで番組降板後、コロッケはどうしていたのかというと、文字通りゼロからの出発。映画、舞台、ビデオなどを死ぬほど見て勉強した。おそらくこの間の努力が、後の肥やしになり、現在につながっている。他の四天王や、後に登場した若手らにはない、群を抜いた進化系、斬新、バリエーション豊富、ユニークな芸を体得できたのだと思う。

 他と一線を画す歌まね、顔まねを交えながら、デフォルメは変幻自在、まねをする相手以上に本人としか思えないような、面白いキャラを作り上げていった。

 例えば、おなじみの「五木ロボット」はどんな発想から生まれたキャラなのか。「勝手にマネしてすみません」の中で、本人はこう語っている。

〈映画ならその作品を何度も繰り返し見て、気づいたことを掘り下げていく。五木ひろしさんをロボットにした「五木ロボット」というネタは、映画「ロボコップ」を見ているときに思いつきました。ロボットの中には誰が入っているんだろうと考えて、あ、五木ひろしだって。そんな風に発想することが生きていく上でどれだけ大切か学んだ〉

 そんなコロッケを支えているのは、彼が幼少期に離婚して女手一つで家族を支えた厳しく、おおらか、カラッとしてまっすぐ、そして愛情豊かだった母親と、ものまねがうまかった姉。

 とくに今もコロッケが信奉しているのは、著書のタイトルでもある母親の「あおいくま」の教え。このことは「勝手にマネしてすみません」で語り、もちろん著書でも書いているが、さらに本人に初めて筆者がインタビューした「生きるクスリ」というテーマでも、さらに詳しく語ってくれた。

 インタビューは〈僕の生きる指針、基本は母親が教えてくれた「あおいくま」という教えです〉から始まる。

 あ=あせるな、お=おこるな、い=いばるな、く=くさるな、ま=まけるな。この頭の字を取って「あおいくま」。その中で例えば、最後の「まけるな」についてこう説明した。

 コロッケは「ものまね王座決定戦」で初優勝するまで、「あいつにまけるな」と思いながらものまねをしていた。「負けるな」の意味を、攻撃的に捉えていたという。ところが、優勝してみたら、自分の中に何も残っていないことに気がついた。

「これはどういうことなんだ……」

 あいつに「まけるな」ではなく、自分に「まけるな」。つまりまける主体をあいつではなく、自分に置き換えてみた。すべて自らへの戒めの言葉と捉えてみたら、誰も憎くないし、「この野郎」とも思わなくなった。景色が違って見えたのだ。

自分への戒めとして

 あせるな、おこるな、いばるな、くさるなも同じ。自分にあせるな、自分におこるな、自分にいばるな、自分にくさるなと言い聞かせる。戒めの言葉とする。これは母親の教えのコロッケ流デフォルメかもしれない。

 教えの由来も気になる。

「京都の古いお寺にあったらしい『おい悪魔』という教えだとわかりました。それを知り合いが母親に教えてくれて感動したので書き留め、壁に貼っていた。ただ、『おい悪魔』では怖いから、ひらがなにして並べ替え、『あおいくま』になった」

 母親はこれを家族みんながテレビを見る部屋に貼っていたので、見るともなしに目に入る。コロッケはそれを見て、小さい声で「あおいくま」を呟きながら育った。そして今も呟いている。

「人生は、この五つたい」が母親の口癖だそうだ。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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