暗い表情を見せたダイアナ妃、ゲリラ事件が続発… 平成「即位の礼」の舞台裏
【前後編の後編/前編からの続き】
35年前の平成2年11月12日、新天皇陛下(現上皇陛下)の即位の礼が挙行された。新憲法下初の即位儀式では、政教分離の原則から、式典内容を巡って保守派と護憲派が対立。最大の懸案が「即位礼正殿の儀」で新天皇陛下を前に唱和する海部首相の“万歳三唱”だった。
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【レア写真】カメラ目線で美し過ぎる笑顔を見せるダイアナ妃 時折「暗い表情」も見せていたという
前編【万歳三唱を巡って保守派と護憲派が対立… 平成の「即位の礼」の舞台裏】では、万歳三唱を巡る、保守派と護憲派の激しい対立について報じた。
午後1時、158カ国の祝賀使節、内外の代表ら計2200人余りが参列して開式。天皇専用の束帯姿の陛下が、神器の剣と璽(まが玉)などを捧げ持った侍従を従えて登場し、高御座(たかみくら)に後方から入る。次いで、十二単(じゅうにひとえ)の皇后さまが隣の御帳台(みちょだい)へ。その前には皇太子殿下(現天皇陛下)をはじめ男子皇族6人が束帯、帯剣で、女子皇族7人が十二単姿で並び、皇室による平安絵巻が再現された。
陛下は即位を内外に宣言し、日本国憲法を順守して象徴天皇の務めを果たすことを誓うお言葉を述べた。ここにも時代が変わったことが象徴的に表れていた。前回の即位礼まで新天皇が述べる内容は漢語体で難解だったが、今回から分かりやすい口語体に改まったのだ。
続いて海部首相が、「私たち国民一同は、天皇陛下を日本国及び国民統合の象徴と仰ぎ、文化の薫り豊かな日本の建設と、世界の平和、人類福祉の増進に努力することを誓います」(要約)とお祝いを述べた。首相はその後に4歩下がって、「ご即位を祝して、天皇陛下万歳」と音頭を取り、参列者の万歳三唱となった。
ゲリラ事件が続発
中庭を挟んで両陛下と向かい合う席に陣取る外国代表団は、事前の説明に従って、そのまま静かに「万歳」を見つめていた。こうして、ほぼ予定通りに30分で儀式は終了したのだった。
国会議員は全員が招待されており、共産党を除く社会、公明、民社の野党各党の党首も参列。万歳三唱を巡って党内議論があった社会党の土井たか子委員長は、
「天皇が日本国民と世界の代表の前で、憲法順守や世界平和を述べられた意味は大きい。(万歳は)祝意を込めてということなので三唱した」
と語った。だが同党の女性議員や新人議員の一部が欠席し、皇室儀式を巡って党内の憲法論争が完全には決着していなかったことを物語っていた。
両陛下のこの日のスケジュールは、まだ半分しか終わっていなかった。時代装束から、洋装に着替え、午後3時半からお披露目のパレード「祝賀御列(おんれつ)の儀」がある。両陛下が乗ったオープンカーを中心に44台の車列が、皇居から赤坂御所まで4.7キロを30分かけてゆっくり走り、休日となった都心の沿道は約11万7000人の人波で埋まった。
この日もゲリラ事件が続発し、警備当局は沿道に約3万7000人の警察官を動員する厳戒態勢を敷いていた。パレードに向かって舞踏家の花柳幻舟が爆竹を投げつけ、現行犯で逮捕される騒ぎもあった。
午後7時半からは再び皇居の宮殿で、正殿の儀に参列した外国の元首、祝賀使節など約350人を招いて、「饗宴(きょうえん・もてなしの宴)の儀」が続く。外国賓客を迎えての宮中晩餐(ばんさん)会はフランス料理が明治以来の定番だが、今回、初めて和食となった。
それには理由があった。招待客があまりにも多いので、そのつど温め、何度も皿を替えるフランス料理は無理だったのだ。味付けははっきりした味を好む外国人の味覚に合わせ、焼き物に牛肉アスパラガス巻きなどが入った。食べやすいように、箸の隣にスプーンやフォークが置かれ、日本酒のほかにワインも用意された。
食後、両陛下は賓客たちを正殿の儀が行われた「松の間」に案内し、高御座や御帳台を披露した。この後も宴は続き、最後の賓客が退室したのは日付が変わる頃だった。
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