ME:I大量脱退の背景に「オーディション後遺症」 ファンは熱中できる一方、アイドルの負担が大きすぎるシステムか

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 昨年の紅白歌合戦でトップバッターを務めたグループ「ME:I」から4名のメンバーが脱退することが発表された。ライターの冨士海ネコ氏は、この騒動は偶発的な出来事ではなく「オーディション番組」というシステムが抱える構造的な問題であると分析する。

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 紅白歌合戦が近づく年の瀬。出場者発表のたびに、祝福と高揚感あふれるコメントがSNSを埋め尽くす季節だ。だが、その華やかな舞台を巡る感情は、本当に喜びだけなのだろうか。夢の到達点として語られてきた紅白の裏側で、競争から降りざるを得なかった若い才能や、走り続けることに疲れてしまった人たちの存在は、ほとんど目に留まらない。昨年初出場を果たし、はつらつとした笑顔でトップバッターを務めたME:Iから4名のメンバー脱退が発表された今、その事実を無視できなくなっている。

 ME:Iは、オーディション番組を通じて注目を集め、視聴者投票という参加型のプロセスを経てデビューしたガールズグループだ。画面を通じて、デビュー前から「物語」を提供してきたともいえる。誰が努力したか、誰が成長したか、誰が脱落したか。そのすべてを視聴者は知っているし、知っているつもりになっている。視聴者投票は、応援の形であると同時に、「自分が選んだ/選ばなかった」という意識を強く残す仕組みでもある。

 その結果、デビュー後もメンバー同士は無意識のうちに比べられ、序列化され、評価され続ける。他メンバー推しからの誹謗中傷が問題視されてきたのも、番組が終わってなお「勝ち負け」の感覚が残り続けているからだ。ファン層が中高生中心という点も、感情の振れ幅を大きくする。推しを守りたいという純度の高い感情が、時に攻撃性へと転じてしまう。その熱量こそが注目度を高めてきた一方で、メンバーの心身をすり減らしてきた側面は否定できない。

 そうした状態にさらされ続けることは、まだ若いメンバーたちにとっては想像を絶するプレッシャーだっただろう。適応障害となったメンバーや、体調不良者の続出がそれを物語っている。なおかつ今回の脱退にあたっては、運営への不信感を語るメンバーもいたという。そして結果的に、グループの約3分の1にあたる4名の脱退を招いてしまった。これらは偶発的なトラブルというより、競争が終わらない構造の中で蓄積された疲弊の結果と見るべきだろう。

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