瀬川瑛子らが受け継いだ「八代亜紀さん」の“遺志” 配信コンサートを通して「歌で元気を与えたい」

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“演歌の女王”と呼ばれた八代亜紀さん(享年73)が2023年12月30日に急逝してから、三回忌を迎えた。彼女の遺志は、今も歌手たちに引き継がれていて……。

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遺志を継いで

 11月26日、都内のスタジオで瀬川瑛子(77)のコンサートが行われていた。しかし、客席は無人。それなのに、瀬川は八代さんへの思いを語り始める。

「心の大きな方で、いつも明るくて……」

 実はこれ、全国の福祉施設などに向けたオンラインコンサートなのだ。

 スタジオに設置されたモニターには、各施設の入居者が映し出されている。瀬川がヒット曲「命くれない」を歌うと、リズムに合わせてうちわやペンライトを振る。視聴者が瀬川に質問を投げかけるなど、双方向での交流も行われた。

 外出の難しい高齢者にしてみればうれしい取り組みだろう。この配信コンサートを始めた人物こそ八代さんなのだ。今は彼女の遺志を継ぎ、さまざまな歌手が出演する。瀬川もその一人だ。

「八代さんの思いは、私たちの思いでもある」

 出演を終えた瀬川が話す。

「私たち歌手は、応援してくださる皆さんの声が力になる。だからこそ少しでも楽しんでほしい。八代さんの思いは、私たちの思いでもあるんですよ」

 彼女には強く印象に残る八代さんとのエピソードがある。

「私は東京・渋谷の出身で、NHK紅白歌合戦が行われるNHKホールは地元です。デビュー21年目に初めて紅白に出場できた際、八代さんは“瑛子ちゃん、故郷に錦を飾れたね”と言ってくれて、本当にうれしかった。今も忘れられません」(同)

母との別れ

 では、どうしてコンサートは始まったのか。配信事業を運営する株式会社レクチャンの山田舞代表取締役が語る。

「コロナ禍で八代さんは介護施設にいるお母様と自由に会うことができなくなり、対面できてもガラス越しだったと聞いています。そうした中、20年5月に八代さんのお母様が亡くなるのです」

 この経験から、八代さんは“何かできることはないのか”と考えたのだ。

「そこで八代さんから“施設の方々に歌で感動を届けたい”とお話をいただき、スタートしました」(同)

“歌で元気を”

 コンサートは、22年5月から23年8月までで計15回、無料で配信された。過去には1回の配信で10万人以上が視聴したこともあったという。だが、23年9月に病気で活動を休止。多くの人が復活を望んだが、八代さんは帰らぬ人に。

「発起人の八代さんが亡くなり事業を終了しようという意見もあったのですが、画面越しに映る皆さんの笑顔や涙を流して喜ばれる方のことが忘れられなくて……。悩んだ末、私が代表に就任して事業を継続することを決めました」(山田氏)

 現在は月2回の有料配信となったが、開始当初から有料化は検討されていたという。配信時に必要となるスタジオ代、人件費などを賄うためだ。

「“歌で元気を与えたい”とする八代さんの思いを絶やさないためにも、各施設に最低限の費用を負担いただく形で有料に移行しました。そのため本企画の趣旨に賛同いただいた歌手の皆様は、その多くがボランティアに近い条件で出演してくださっています」(同)

 瀬川と同様に過去3回、出演した山川豊(67)も、

「歌の力ってすごいんです。体の動かない方が、俺たちの歌を聴いて体を動かしたりする。昭和の大変な時代を私たちの歌を聴いて生きてきた方たちがだからこそ、歌ってあげたい。お金じゃないんですよ」

 八代さんの願いは、今も生き続けているのだ。

週刊新潮 2026年1月1・8日号掲載

ワイド特集「天馬空を行く」より

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