「主役級」選手が実は「3人だけ」だった男子ゴルフ、そこに分け入った“努力と忍耐”の英国人選手とは 来季の日本男子は5人参戦【2026年展望】

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シェフラーはキャリアグランドスラムに王手

 そして6月。難コースのオークモントで開催された全米オープンでは、あのスポーンが首位から1打差の2位タイで最終日を迎え、再びメジャー優勝に王手をかけた。

 3月のプレーヤーズ選手権でマキロイとのプレーオフに敗れたスポーンは、あのときもこのときも、「恥ずかしい負け方だけは嫌だ」と思っていたが、オークモントの最終日には前半だけで5ボギーを喫し、優勝争いから脱落したかに見えていた。

 ところが、後半は12番、14番、17番と次々にバーディーを奪い、最終ホールの18番では20メートル超のバーディーパットを見事に沈め、幼いころから夢見てきたメジャー・チャンピオンに輝いた。

 落ちても落ちても、それでも這い上がったスポーンのネバーギブアップの戦いぶりは、大勢の人々に勇気と元気をもたらし、スポーンの名前と存在は、一気に世界に知れ渡った。

 そして7月。全英オープンの舞台は、マキロイの故郷、北アイルランドのロイヤル・ポートラッシュだった。4月に悲願のマスターズ初制覇を成し遂げたマキロイは、故郷の人々の目の前で全英オープンを制覇する姿を披露しようと懸命に戦っていた。しかし、勝利したのは、シェフラーだった。

「メジャー大会で勝つのは大変なことだが、全米プロで勝った経験を活かすことができた。パーならグッド。そう思いながらプレーした」

 2022年と2024年にマスターズで勝利したシェフラーは、2025年に全米プロと全英オープンでも勝利を挙げて、メジャー4勝を達成。早くもキャリアグランドスラムに王手をかけた。

新たな主役、トミー・フリートウッド

 こうして振り返ってみると、「第5のメジャー」とメジャー4大会を合わせた5大会の覇者はマキロイ、シェフラー、スポーンの3人だけで、PGAツアーのレギュラーシーズン終了後のプレーオフ・シリーズでは、3試合のうち2試合をシェフラーが制覇。ここまでの「主役級」選手は、この3人に絞られていた。

 しかし、最終戦のツアー選手権では、新たな主役が誕生した。英国出身のトミー・フリートウッドが、悲願のPGAツアー初勝利を挙げて年間王者に輝き、世界中のゴルフファンを大いに沸かせた。

 フリートウッドは欧州のDPワールドツアーでは、これまでに通算7勝を挙げ、PGAツアーでも何度も優勝争いに絡んできたが、どうしたわけかPGAツアーでは勝つことができなかった。しかし、彼は常に前向きだった。

「どんなときも、心を良い状態に保つことを心掛けてきた。これまでずっと、なかなか勝てなかったけど、それでも毎週、試合会場に来て、練習して、そして戦ってきた」

 忍耐と努力が、ついに実ったこの日、試合会場だった米ジョージア州アトランタ郊外のイーストレイクで、英国人選手のフリートウッドを讃える「トミー! トミー!」の大コールが沸き起こったことは、とても素敵な現象だった。

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