ネトフリが「ワーナー」買収で“邦画界”はどうなる? 「るろ剣」「東リベ」「爆弾」を送り出した名門の今後…元「日本法人代表」は“大谷翔平”通訳の実父

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ワーナーの功績

 日本に絡んだヒット作もある。トム・クルーズ(63)が主演し、渡辺謙(66)がハリウッドデビュー。先日、急逝した原田眞人監督も役者として出演し、興収137億円を記録した「ラスト サムライ」(03年)、クリント・イーストウッド(95)の監督・脚本ならびに、嵐・二宮和也(42)のハリウッドデビュー作で、興収51億円を記録した「硫黄島からの手紙」(06年)などだ。

「アイアトン氏の豊富な人脈を利用して、巧みな宣伝戦略で配給作品をヒットさせ、本国の幹部からも大いに評価されました。そのうち、もともと興味を持っていた映画製作だけでなくマーケティングや配給、デジタル配信を含むホームエンタテインメント、コンシューマー向け製品やビデオゲームなど、日本における幅広い事業を統括します。そして役所広司さん(69)を主演に据えた時代劇『最後の忠臣蔵』(10年)で、邦画製作事業に参入します」(同前)

 以後、5作累計で、興収190億円近くを稼いだ、佐藤健(36)主演の「るろうに剣心」シリーズ、いずれも北野武監督(78)作品で、興収14.5億円を記録した「アウトレイジ ビヨンド」(12年)、16億円を記録した「龍三と七人の子分たち」(15年)、小栗旬(42)の主演で人気コミックを実写化した「銀魂」シリーズ、不良漫画を実写化した「東京リベンジャーズ」シリーズなどを世に送り出した。

 アイアトン氏は退社後の15年4月、エンタメ企業「アイアトン・エンタテインメント」を設立し、吉本興業や東北新社、スターチャンネルなどとパートナーシップを結んでいるが、WBJではアイアトン氏が去ったあとも、そのノウハウは引き継がれた。

 昨年は、人気コミックを実写化した永野芽郁(26)主演の「はたらく細胞」が興収63億円。今年はホラー小説を実写映画化した「近畿地方のある場所について」が15.5億円、人気推理小説を実写化した「爆弾」が26億円を記録し、公開中の人気不良漫画を実写化した水上恒司(26)主演の「ウィンドブレイカー」が最後の邦画配給作品になった。

「邦画界で、長くひとり勝ちの状態にあった東宝は、なかなか企画が通らないことで知られています。一方、東宝と並ぶ老舗の東映、松竹、KADOKAWAは東宝ほど潤沢な製作費を出せません。その点からすると、ワーナーは企画が通りやすく、資金力もある。結果、毎年ではないものの、メガヒット作を生むことになったのです。そのため東宝の幹部は、ワーナーがどんな邦画を配給するのか、その動向を常に気にしていました。ワーナーの邦画配給の取りやめで、東宝も張り合いがなくなってしまうのではないでしょうか。いずれにせよ、邦画の全興行収入は来年以降、かなり落ち込みそうです」(先の映画業界関係者)

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