不倫バレ&流血沙汰から1年…「無視されるのがいちばんつらい」 “沈黙の妻”と向き合えない45歳夫の苦悩

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それから1年…

 それから1年、妻は香奈さんとの関係についてはいっさい聞いてこない。そのほうがいいと義母に言われたのだろう。義母との関係は急速に復旧したようだ。晃太さんとふたりきりになるのを避けているし、寝室はもともと別なので、夫婦の会話はない。だが、子どもたちがいるところではごく普通に話をする。

「子どもたちも来年は中学生になりますから、何か気づいているかもしれません。妻が何を考えているのかは、いつも気になっています。何か言いたいことがあったら言ってとときどき声をかけるんですが、妻には無視されます。正直言って、無視されるのはいちばんつらい。子どもがいれば無視しないんですよ。でも子どもの前で夫婦関係については話せない。義母によれば、沙保里は主婦として母としての理想を追求していたのに、それを僕に壊されたと言っているそうです。子どもたちに英才教育をしようとしたのに僕につぶされた、専業主婦として完璧にやっていたのに僕から尊敬されていない、と。僕は完璧な主婦なんて望んでいませんでしたからね。それより共働きで、ともに子どもを育てながら一緒に歩んでいきたかっただけ」

 そのあたりのすれ違いが埋まらないまま、10数年経ってしまったのだから、結婚生活というのは残酷なものだ。

香奈さんの関係は

 一方で、晃太さんと香奈さんの関係は今も密かに続いている。香奈さんは、不倫相手の妻を訪問するという暴挙に出たのだが、まったく悪いことをしたとは思っていないようだ。

「だってどういう人か会ってみたかったんだもの、とあっけらかんとしています。不思議な女性なんですが、そこが彼女の魅力でもあって別れられない。不惑を越えてなお惑っています」

 妻は1度、大爆発をしてからは静まりかえっている。いっそ、もっと責めてくれれば関係を修復する手立ても見つかるのだが、そのチャンスさえ与えてくれない。

「むしろ、僕のほうがときどき爆発していますね。昨夜も寝室に向かう妻に『きみはオレにどうしてほしいんだ、どうすれば前向きに話し合いができるんだ』と言ってしまった。妻は冷たい背中を見せただけでした」

 無視するなよと叫んだが、振り返ってはもらえなかった。

「無視はきついです」

 晃太さんの目が充血していた。

***

 離婚せず、だが不倫相手との関係は継続し、一方で妻の冷たい態度には不満を漏らす晃太さん。彼自身、決着する方法を見失っている様子がうかがえる。そもそも結婚生活の始まりから、すれ違いは生じていたのかもしれない。その詳細は【記事前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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