不倫バレ&流血沙汰から1年…「無視されるのがいちばんつらい」 “沈黙の妻”と向き合えない45歳夫の苦悩
突然の自宅訪問
そこから関係が始まった。時間をやりくりし、目配せをかわして関係を続けた。共同代表の友人は、仕事以外は家族と一緒にいたいタイプなので、ふたりの関係には気づかなかったし、ふたりは大人として絶対に誰にも悟られないように注意を払った。
「ただ、僕はなぜかそのことを義母に話したんです。万が一、何かあったら義母が助けてくれるんじゃないかと思って。そうしたら義母は『わかった。私は晃太さんの味方だから』と言ってくれた。言ってしまう僕も僕だけど、味方してくれると約束してくれた義母もヘンな人ですよね、考えてみれば。でも不倫しているときって味方がほしいんですよ。僕自身、罪悪感を拭いきれなかったんだと思う」
晃太さんは中学生のころ、母を病気で亡くしている。それ以来、父親は商店を経営しながら、男手ひとつで彼と妹を育ててくれた。父親には特別な思いがあったが、母のいない寂しさも抱き続けていた。だからこそ義母に、亡くした母を見ていたのだろう。
「丸2年たったところで、ある日帰宅したら、『今日、香奈って人が来た』と沙保里が言うんです。ドキッとしたけどさりげなく、仕事仲間だけどと言ったら、『あなたとつきあっているから、離婚してあげてと言われた』って。なんだか笑っちゃいました。香奈が言いそうなことだったから。沙保里には『誤解だよ』と言ったけど、もちろん沙保里が納得しているはずもないですよね」
だが沙保里さんはそれ以上、なにも言わなかった。晃太さんは義母に報告、義母からは「わかった。何かあったら連絡して」と返事が来た。翌日は香奈さんをランチに誘ってことの顛末を聞いた。なぜそんなことをしたのかと。
「香奈は、『晃太さんの奥さんに興味があったの。どういう人なのか見たかった』って。それだけかい、とツッコんでしまいました。ともあれ、香奈が沙保里に離婚しろというのは筋が違う、これはうちの夫婦の問題だからと言ったら、『そうね、よけいなお世話だったわね。でも私はあなたに離婚してほしいの。再婚したいわけじゃない。ただ、お互いに独身としてつきあいたい。立場が違うのは不平等でしょ』って。その気持ちはわかるけど……と困惑しました」
晃太さんは「妻とうまくはいかないが、離婚はしたくない」という立場、香奈さんは「晃太さんには独身になってほしい」という立場。お互いの立場を理解しなければつきあいは続かない。ただ、子どもたちが成人したら話は別だ。そこから離婚に向かうと思うと言うと、香奈さんはあっさりと了解した。
流血沙汰に
あとは妻との関係をどうするかだ。晃太さんは、週末、子どもたちが義母のところへ遊びに行った隙に妻に話し合おうと声をかけた。
「妻は何かが爆発したんでしょうね、あんたが悪いのにどうしてそんなに冷静でいられるのよとギャーギャー叫び声を上げて、手当たり次第に物を投げてきた。離婚したくないんだ、だからちゃんと話そうと妻を抱きしめたら振りほどかれたあげく、顔を手でひっかかれました。かなり流血して大変だったんですよ」
血に驚いたのか、妻はますます興奮してテーブルにあったオブジェを投げつけてきた。それが鼻に当たってさらに流血。結局、鼻骨を骨折したという。
「話し合いはできず、僕は病院へという情けない展開になりました。その後、妻は頼るところがなくて義母に泣きついたみたいです。義母はすべて知っていますから、妻の愚痴を受け止め、『それでも晃太さんは生活力があるんだから、うまく利用しなさい』と説得したとか。離婚したいならしてもいいんじゃないのと義母も言ってくれたけど、やはり子どもたちへの影響を考えるとしたくなかった。結婚って何だろうと思いながら、僕自身が結婚という形に執着していたような気がします」
[2/3ページ]

